以下は僕がお手伝い先の職場で、スタッフが見るライングループに掲載した内容です。 (一部ブログ用に改編してあります)
―無意識の心地よさをつくるサービスの視点―
飲食店でドリンクを提供する際、
グラスをどこに置くか——あなたは意識していますか?
多くのレストランでは、
「お客様から見て右上に置く」が一般的です。
もちろんそれは間違いではありません。
ただし、私は“絶対”ではないと考えています。
なぜ右上が”常識”なのか
右利きの人が多い日本では、
右手前にドリンクがあるほうが取りやすい——
そんな理由から、右上が基本とされています。
しかし、接客は“原則”よりも“お客様”が優先です。
では、例外はどんな時に生まれる?
●2名様でカウンター席・横並びのテーブル席の場合
例えば、カウンターや横並び席で、
お客様が二人並んで座っている時。
左側に座るお客様のグラスを、
私は左上に置きます。
なぜか?
二人の間のスペースに料理を置いた時、
左のお客様のグラスが右上にあると——
-
取り分ける時に邪魔
-
グラスを動かすひと手間が生まれる
-
無意識のストレスにつながる
だからです。
私は、二人の間のスペースは必ず空けるようにしています。
「取りやすい」と「心地よい」を両立するためです。
右から出し続けることが、ベストとは限らない
例として、
位置関係的に、右側からドリンクを置こうとすると、
お客様が体を避けないと提供できない場面が出ます。
そんな時、左側からそっと置くほうが、
お客様にストレスを与えません。
サービスは常に、“お客様の動きを減らす”という視点が大切です。
「コースター」が教えてくれること
●コースターがある店
→お客様はコースターの上に戻す(=位置が決まる)
●コースターがない店
→お客様は好きな位置に置く
つまり、
お客様が最初にグラスを動かした場所 = ”その人の心地よい位置”
提供側は必ずこれに合わせます。
無意識に置いた場所こそ、
最も自然で落ち着く場所だからです。

ワインの場合の例
ワインを回す(スワリング)時、
多くの方は右手で回します。
そのため、右側に自然と動かされる。
→ 移動した場所 = その人のベストポジション
余談ですが、ワイングラスにコースターは必要ありません。
スワリングの邪魔になるためです。
サービスとは”気づかせない気遣い”
「いい店」ってどんな店でしょう?
多くの方はこう答えるはずです。
なんか心地よかった
気持ちよく食事できた
でも、その裏側には
理論 + 仕掛け + 観察 + 配慮が存在します。
-
コースターの有無
-
席の配置
-
お客様の利き手
-
食事中の動き
“気づかれないサービス”は、
こういった小さな積み重ねでできています。
まとめ
-
右上は基本。でも絶対ではない
-
2名横並びの場合、左側の方は左上が心地よいことも
-
コースターがある時は、その位置が「正解」
-
グラスが動いたら、それが“お客様の答え”
-
サービスは「無意識の快適さ」をつくる仕事
正解はひとつじゃない。
お客様一人ひとりの“自然”が正解です。
参考になれば幸いです。
