飲食店において、アレルギー対応は必要不可欠になりました。
メニュー表記に各種アレルギー内容を掲載するお店もあります。
このアレルギー対応は、定められたルールではない(現状)ですが、
お客様に期待されている対応の一つでもあります。
しかしながら、今後もし重篤なアレルギー過失が発生すれば、
後追いで法律が定められることも大いに考えられます。
以下は、実際に僕が現場で行っていたオペレーション、
遭遇したミス、聞いた内容をシェアすることによって、
皆様の店舗での仕組み作りの一助になれば幸いです。
まずは体験談から――
会社としてのオペレーション基礎
まず、会社として行っていた、
【アレルギー対応の基礎】は、
オーダーを通す際に、テーブル番号の前に、
【A】を付ける仕組みだった事です。
これは、アレルギーのAを意味し、伝票が送信された時点で、
キッチンホールどちらにも、そのテーブルがアレルギーであることを分かり易くするためでした。
キッチンは料理を作り始めるときに、
Aが頭についていれば注意喚起して作成するスタッフに伝える。
フードアップされた際には、お料理を運ぶ人も、
そのテーブルがアレルギーだと認識できるので、
注意して持って行く――
周知徹底できる仕組みでしたが、
そもそも【テーブル番号の頭にA】を付けていなければ、
機能しないという側面もありました。
コース料理でアレルギー
以下は僕が勤めていた会社、他店舗の出来事です。
そのお店ではコース料理がありました。
そして、コース料理が頻繁に入る業態でもあり、
会社としても積極的にお勧めしている内容でした。
あるとき、貝類がアレルギーというお客様がいました。
その方含め、確か3名様のご予約だったと記憶しているのですが、
コースの前菜3点盛りには、貝を使用した物が含まれていた為、
違うものでご提供する予定でした。
お客様来店後、早速提供された前菜の中に、
なんと北寄貝を使用したものが提供されてしまいました。
そこで貝類アレルギーのお客様は、
不思議に思って通りすがりのスタッフに聞きました。
「これ、貝ですか?」
聞かれたスタッフは即答で、
「いえ違います。ミョウガですね」
その言葉を真に受けて、口にされた途端、
お客様は重篤なアレルギーをお持ちだったようで、
アレルギー発症に至ってしまい、
救急車を手配する始末になったようです。
問題点
この背景にある問題点は、以下の5つになります。
-
責任者は営業前のミーティングで情報を共有していたか?
→全員参加のミーティングで共有されていた。 -
来店時、ご案内したレセプションは、担当ウェイターに伝えたのか?
→当時お客様がウェイティングしている状況で、多忙中の認識不足で伝達できていない。 -
オーダーテイク時にアレルギー確認を行うのが基本オペレーション。
オーダーを取った担当ウェイターは、お客様にアレルギーの有無を確認したのか?
→していない。ので、当然テーブル番号の前にAが付いていない。 -
キッチンはそのご予約時間のコースは一件だったにもかかわらず、それがアレルギーのご予約と気づけなかったのか?
→もし気付いていれば注意喚起が出来た。 -
通りがかりの新人スタッフは、なぜ嘘を教えたのか?
→入って二日目の新人だったが、目にしたときにミョウガだと勘違いし確認を怠り、かつ勝手な推測をお伝えした。
幾ら仕組みを作っても、これだけミスが重なってしまえば、
防ぎようもありません。
さて、ここで読者の皆様に質問です。
それぞれ問題点を挙げましたが、
この中で最も重要なミスをしたのは誰でしょうか?
そして、それぞれのミスの度合いを順番にするのなら、
どの順番になるでしょうか。
是非、考えてみて下さい。
↓↓↓
答え
以下は僕が考える答えです。
-
責任者が共有していても、徹底できていなければ意味がない。
皆、他人事でミーティングを聞いているのだと思った。
責任者として打つべき手を打っていないことが一番重要なミスとなった。 -
レセプションは来店時に行うべき情報の共有不足。
名前を言われただけでご案内してしまい、
そのご予約の内側を伝達ミスしてしまった。
欠かしてはいけない役割を全うしていなかった。 -
担当ウェイターの基礎オペレーション不足。
オーダーテイク時にアレルギー確認を行うのが基本オペレーション。
を、ルール化されていたのだから。
そして多忙だったそうだが言い訳にはならない。
この中で二番目に重要なミス。 -
期待を込めて言えば、キッチンはオーダーが入った時点で、
(あれ?)と不思議に思ってくれて、確認してくれれば防げた可能性。 -
新人の適当な答え。常識的に考えられないミス。
この中で三番目に重要なミス。
責任者の管理不足
僕の考える責任の重さの順番は、
1(責任者)→3(担当ウェイター)→5(新人)→2(レセプション)→4(キッチン)です。
実は、責任者のミスが最も大きいのです。
それは単に【責任者だから】という訳では無くて、
【責任者として然るべき手を打っていない】からこそ、
最もミスが大きいのです。
なぜなら、そのアレルギーのテーブルは、
当日絶対に外してはいけない、
最たるテーブルの一つだったはずです。
なぜ、何時ご予約時間の●テーブルと決まっていて
(テーブルを決めていなかったのならもっと悪い)
防げなかったのか、甚だ疑問。
ご予約のテーブルが指定でない限り、
前にいるお客様の滞在時間によって、ご予約席が変わることは多い。
時間とテーブルさえしっかり決めておけば、
例えテーブル番号の頭にAが付いていなくとも、
キッチンと担当ウェイターとレセプションに、
何時の何番テーブルのこのコース三名様はアレルギー
だと周知させておかなかったのだろう。
という感想が真っ先に来ます。
そして、レセプションには、
「そのお客様が来店されたら、自分が案内するから呼んで」
の一言で、もっと確実になったはず。
結局、どれだけ具体的に、
【ミスを回避する手を打っているか?】
が、最も重要なのです。
店長不在時の責任者にも
そしてそれは、決して店長だけではありません。
責任者とは、店長不在時のトップとも言えます。
日頃から、店長が積み上げてきた、
アレルギーのオペレーションが染みついていた店舗であれば、
店長不在時にもしっかりと運営できている筈なのです。
この事件は、実は日頃行っている運営管理方法が、
不足していたことを露呈した結果となりました。
僕はこの事件の顛末と私見を、
スタッフの全体ラインと、朝礼でシェアして、
日頃のスタッフの意識向上に役立てたことは、言うまでもありません。
――続く