アレルギー対応

事例集 飲食店で起こしてはいけない事 飲食店運営のヒント

飲食店アレルギー対応の重要ポイントと教育の仕組みづくり~後編~

飲食店において、アレルギー対応は必要不可欠になりました。
メニュー表記に各種アレルギー内容を掲載するお店もあります。

このアレルギー対応は、定められたルールではない(現状)ですが、
お客様に期待されている対応の一つでもあります。

しかしながら、今後もし重篤なアレルギー過失が発生すれば、
後追いで法律が定められることも大いに考えられます。

以下は、実際に僕が現場で行っていたオペレーション、
遭遇したミス、聞いた内容をシェアすることによって、
皆様の店舗での仕組み作りの一助になれば幸いです。

 

 

まさかの自分が責任者の店舗でも

ある多忙の土曜日ランチタイム。
店頭にはお客様がウェイティングする列が。

そろそろピークを迎えようかという所、
入って半年近く経ったスタッフから報告がありました。

 

店長すみません、アレルギーの物が出て、お客様が怒っているんです・・・

 

ご予約なしでご来店された、両親と子供二人家族のテーブルで、問題があったとの報告。
経緯を聞けば、なんとオーダー時に、お客様より以下のお申し出が。

 

うちの娘は甲殻類アレルギーなんですけど、この○○の中に甲殻類は入っていますか?

 

その回答に、スタッフは「入っていません」と即答したらしい。
しかし、海老をすりつぶしたものが、
具材として入っている物だった。

 

えっ・・・思いっきり入っているよ・・・
なんで確認もせずに言ってしまったの???

 

 

大事には至らず・・・だが

誤って提供されたアイテムは、
一度娘さんの口に運ばれるが、
ご自身で気付いてくれたおかげで吐き出してくれて、
大事には至らず済んだ。

ラッキーだったのは、

  • 娘さんは小3,4年生で、物を分かってくれたこと

  • 吐き出してくれたこと

  • アレルギーは軽度だったお陰で、発症せずに済んだこと

だった。

お子様というのは、自分のアレルギーを理解していたとしても、
親から与えられれば無条件に口にしてしまう。

つくづく人の命を預かっているという意識の欠如が如何に怖いか?
を思い知らされる事件だった。

 

以下に、子供が給食で大人から与えられたものを食べて、
死亡してしまった事件を参考にリンクを貼っておきます。

 

 

親の怒り

幸いにして発症には至らなかった。が、
しかしながら、親は烈火のごとく怒る。
確認したのになぜ!?
となるのは当然である。

 

僕は前述のように、お客様対応に向かう前に、
そのスタッフに、
「なんで確認もせずに言ってしまったの?」
と聞くと、

入っていないと思っていました・・・

そう。
前編で書いた新人スタッフ同様、
しっかりと確認せず、
思い込みが起こしたミスである。

 

 

お客様対応

烈火のごとくお怒りのお客様に、
正直に認識不足のスタッフ対応を、
平身低頭でお詫びし、

代わりにお召し上がりになられるアイテムを、
キッチンに最優先で作ってもらうように指示を出し、

「もし万が一、この後お子様の体調に異変があれば、
必ず責任を持って、私が対応させて頂きます」

と伝え、自分の名刺をお渡しして、
お客様のご連絡先をお伺いし、

そのお客様が退店なされるまで、
ほぼ、へばり付きで経過を見続け、

当然、お代は頂かない――

 

 

オペレーションは崩れる

人手不足も相まった多忙の中、
責任者である僕は、多くの時間を、
お客様の対応に手を尽くすことになる。

となれば、当然運営にも支障が出る。

オペレーションが崩れていき、
お客様が帰っても手が足りず、リセットが出来ない。
並んでいるお客様をご案内することも叶わない。

店頭で待っている、イライラが募るお客様と、
店内でも手が足りていないので、
呼んでもすぐに対応されないことに更にイライラ。

お客様はお腹が減って来店しているのだから、
入り口付近でのストレス度たるや。

どの従業員もお客様に近寄りたくないほどの空気感になっている。

僕はお客様対応の間を縫って、
店頭のお客様への対応を行うが、

どのお客様も顔は怒ったまま、イライラを募らせている。

たった一人の適当な回答で、
当日のお客様満足度も、
売上も大きく下がることになる。

 

 

その後、会社として

その会社は、アルバイトの運営で成り立っていることもあり、
アレルギー対応の人為的ミスが、各店舗で定期的に起こっていた背景もあった。

その事例があって後、メニュー自体の名称を
【海老の〇〇】と変更した事と、

追って後日、各メニューに【主要7品目】である、
(えび・かに・そば・落花生・卵・乳製品・小麦)
のアレルギー表示を加えることとなった。

 

 

オリエンテーションで必須の教育

僕はリスクマネジメントが足りていなかったと猛省し、
その後、新人のオリエンテーションで、
最も時間を費やす教育項目の一つとなった。

その際に必ず例として使用したのが、
前編で書いた会社の事例、
そして上記の僕の事例である。

 

忙しさにかまけて

人は忙しいと、面倒くさがって対応を端折る傾向がある。

本来であれば、アレルギーは最も丁寧に対応すべき内容だが、
忙しさにかまけて適当な対応をすると、
こうした思いもよらない結果を招き、
ミスが大きくなってしまう。

何より、派生する内容が最も痛い。
それは風評被害を含めて。

 

前述のご家族のお客様は、母親の連絡先を聞いていたので、
翌日娘さんに症状が出なかったか確認のご連絡をしたが、
対応は冷ややかなものであり、

いくら謝罪せども、体裁上は許して頂けたが、
心からは許して頂けなかったという事例だった。

そして当然、またお越し頂くことがなかった。

 

確認せずに行う対応が、どれだけ怖いか――
僕は責任者として、痛感しています。

 

是非、お読み頂きました皆さまは同じ轍を踏まれないよう、

この章で書いたオリエンテーションでの事前教育の徹底と、
前編で書いたような、具体的なオペレーションの浸透を目指してください。

 

ご参考になれば幸いです。

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