飲食店【火事】命を預かる現場

コラム 飲食店で起こしてはいけない事 飲食店運営のヒント

飲食店が起こしてはいけない3つのことの【火事】について

オリエンテーションで必ず言うこと

私は飲食店の現場で、リーダーとして幾度も新人研修(オリエンテーション)を行ってきました。

その中で必ず説明していたのが、【飲食店で起こしてはいけない事】のお話です。

 

店が営業できなくなる

飲食店で絶対に起こしてはいけない事、3つあります。
営業できなくなることです。
何か分かりますか?

と、新人に質問します。

だいたい、「食中毒」は言い当てられるのですが、
火事とSNSは出てこないことが多いです。

 

これら三つの内容は、起きると営業できなくなる。
すなわち、
「皆さんの給与がなくなります」
と説明します。

それぞれが、一緒に働く皆のために、
気を付けなければならない事です。
と、連帯責任であることも強調します。

 

具体的に何を?

当然ですが、食中毒には手洗いと、食材管理。
これらを数値化して記録させるなど、
HACCP(ハサップ)の取り組みは重要です。

また、SNSは飲食店において、扱いがとても重要になったのは周知の事実ですが、
バイトテロが無いように誓約書などで手を打つことは必須です。

 

防火管理者の受講

さて、火事に関してのお話をするには、
僕の場合、受講した【防火管理者の講習】でのお話が最も記憶に残っていて、最も影響を受けました。

元々、働いていた会社が新店舗を出すために、
防火管理者の資格が必要だったので、
休みを利用して二日間受講したのですが、
最初の気持ちは「めんどくさいなぁ」でした。

貴重な休みを2日間も、かつ9時~17時という、
ほぼ勤務。という前提条件に気が滅入ったことを覚えています。

 

しかし、受講した後は、とても有意義だった。
聞いていて、受講して良かった。
と、心から思えました。

そして、受講していない、他のスタッフへ宛てたメールで、
学びをアウトプットしました。

今日は、その内容を転載したいと思います。

 

***

 

皆様忙しい中二日間の時間を頂いて、
防火管理の講習を受講させて頂きました。
先ず関係者の皆様、有難うございました。

率直な感想は、眠かったですが大変勉強になりました。
中でも、皆さんにお伝えしておくべき事が沢山あったので、
個人的な感想も踏まえて、少しお話させて頂ければと思います。

 

 

予防よりも最小限が基本

今回の講習で一番驚いたのは、『予防』よりも、
火災が起こった後の、
『被害を最小限に抑える』
事を一番強く伝えられました。

イメージ的に受講する前は、『いかに予防するか?』
を学ぶと思っていましたが、違いました。

理由が興味深かった(と言うと不謹慎ですが)のですが、
なんと全国で、年間6万件もの火災(含ボヤ)があり、
東京都においては、その10%である、
6千件もの火災及びボヤがあるそうです。

 

そしてそして、その全国6万件のうちの、
火災発生原因No.1が何と何と、『放火及び疑い』による物だそうです。
これが全体の約3分の1を占めています。
何と年間2万件もの『放火及び疑い』があるのです!

確かにこれでは予防も大事ですが、
被害を抑える事の方を教える方が大事だなーと気付かされました。
でも、重要な理由はそれだけではありません。
二つあります。

 

一つ目。

地震などの天災により、
併発して起こる火災などの被害の為。

そういえば、関東大震災も地震そのものより、
その後の火災が多数の死者を出した、一番の原因でした。

阪神淡路大震災でも火災が招いた死者、多かったですね。
この被害拡大を如何にして防ぐか?

二つ目。

いわゆる防災訓練というものを実施していた所と、
全く実施していない所の被害の差は、
データ上でも明らかな程、違いがありました。

初期段階での消火や対応に失敗した場合、どれ程の被害を受けるか。
財産だけでなく、人命までも。

だからこその、被害を最小限に抑える事の重要性を、
みっちり教えて頂きましたが、
やはり普段からの

『訓練』と、『心構え』と、具体的な『点検』。

これに尽きます。

 

振り返ってみると危険はいっぱい

これは受講してみなければ分からないと思いますが、
あ、そういえばそんな事あった!
よく火災にならなかったな!
と気付かされる事しきりです。

以下は平成17年の東京都統計です。
参考までにご覧になってみて下さい。

全火災件数:6377件
内建物火災総件数:3979件
内防火管理義務のあった建物内での火災:1504件
内飲食店:193件

この数字が高いか低いか?
・・・圧倒的に飲食店は高いです。

一位が共同住宅、いわゆるマンションや、寄宿舎等です。
これが510件。
二位が前述の飲食店、193件。
三位が事務所等の134件。

負傷者などの確率も、共同住宅を除いて、圧倒的に高いです。

 

火災原因の内訳

では、その火災原因の内訳は・・・?
一位:ガステーブル / 48件
二位:大型ガスコンロ / 31件
三位:タバコ / 16件
四位:放火 / 9件

・・・その後に並んでいるのが、
コード、ライター、電気ストーブ・・・
どれもこれも店でよく使う物ばかりですね。

ちなみに一位と二位の区別が良く分かりませんが、
教官の方に原因の一つとして何度も何度も言われたのは、
『てんぷら油の熱し過ぎ』でした。

これが一番多いみたいです。冷や汗出ますよね。
他にも、簡易ガスボンベの不具合や焼肉屋での事故が多いみたいですが・・・

話が逸れました。

 

 

いざというときの行動を具体的に

一番お伝えしておきたいのは、現場レベルで、

もし万が一、火災が起こったなら!

その時は、誰が指示を出して、誰がどういう役割分担で動くかを、
普段から全員が熟知しておく必要があるのです。

いざと言う時に皆焦って、普段出来る行動が出来ない。

1:消防への連絡。(遅れるとダメ)
2:消火対応。(初期消火に失敗すると被害が拡大)
3:避難誘導対応。(お客様や従業員の命を守る)

一人の指揮官が全てのやるべき事を把握して、
指示を出し、完了の報告を貰う。

普段から、いざと言う時には、店内では、
どこのセクションが何を担当するかを皆が知っていて、
決められているのが一番必要でしょうね。

 

余談ですが、

一分消すのが遅れるだけで、
被害は二乗で、倍々計算で拡大していく

そうです。
如何に、最初の対応が不可欠かと言う事ですね。
これを『訓練』で対応出来る様にするのです。

 

fireman

 

予防

勿論、『予防』も欠かせない軸の一つです。

これも興味深い話の一つですが、
一般的にガスや灯油やガソリンなどの燃料よりも、
『電気が原因の火災』が圧倒的に多いのです。
皆、電気だからと油断するんでしょうね。

店にも沢山あります。電気の物。
タコ足配線で多量の電力を使い、
電気ストーブは目の届かない所でも点いている可能性がある。

ましてやお客様が勝手に電気ストーブなどを、
移動させるのも寒ければ当たり前でしょうし、
その時に可燃物が近くにあっても当たり前ですよね。

 

一番怖かった事例。

店泊したスタッフが暖を取る為に、
椅子をくっつけて毛布に包まって、
電気ストーブを点けながら寝てしまい、
寝返り打って、毛布に電気ストーブから引火して・・・
ビルを半焼する火災になったそうです。

・・・あり得ますよね。実際。

また、明日天気が良いからと、
テラスの電気関係のプラグ、そのままにしてませんか?

これヤバいです。もし万が一発火しても、
そこにスタッフが居なかったら・・・

ましてや報知器のないテラスだったら・・・
考えただけでゾッとします。

夜片付ける時に、そういえばテラスは暗くて見辛いよね?
見落としているものないかな?
ライトはあるけど、見辛いよね。
スポット買いましょう。
懐中電灯でチェックしましょう。
今だけじゃなくて、終業点検に組み込みましょう。

 

他にも、自然発火するもの。

夏の暑い日に朝からベンジンの類をテラスに放置すると・・・
今はもう両店とも使ってないのかな?液体燃料関係。
はたまた化学反応で発火する可能性の物が隣り合わせになってない?
等々・・・

これって、知識のない人が触ったら怖い物を、
どんどん皆で共有して、MGR陣のチェックが出来る環境にならないと。
自分を始め、気を付けましょう。

 

毎日『点検』し、書面で『記録』する事。

人は必ず慣れて来て、いつしかこの点検も、
おざなりになるものですが、

これを持続させるのは、いつも言う
「言い続ける事」以外にありません。

MGR陣が率先して言い続け、記録させないと、
いつしか冷めて行きます。

「喉元過ぐれば熱さ忘れる」ではないですが、
防火管理と衛生管理に関しては、言い続けないといつかまたやります。
勿論、僕も言い続ける様に致します。

 

声は多い方が良い

この講習を、出来うるならば皆さんに受けて頂きたい程です。
一人が声を大にして叫ぶよりも、二人の方が良いに決まっているし、
多ければ多いほど、防火に関しての意識は向上します。
是非是非、受けてみて下さい。

 

最後に。
講師の方々は皆、元消防士の初老の方々ばかり。
失礼ながら皆さん話下手でしたが、

教科書以外の経験談のお話は、
流石に説得力があり過ぎて、
眠気も吹っ飛ぶほどでした。

その中でも一番心に残っている言葉があります。

初期消火や防災の心得が無かった為に、
被害が拡大した。

火災報知機のベルの音を、
今迄の誤報でうるさいからと切ってなければ、
防火扉の所に物を置かなければ、
消防に早く通知していれば、
避難経路に物を置かなければ、
誰かが指揮を執って右か左か言っていれば。

助け出したつもりの若い年頃の女性は、
それこそ眠る様に死んでいた。

 

防火管理者講習
https://www.bouka-bousai.jp/hp/lec_info/guide_bouka.html

 

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飲食店が起こしてはいけない3つのことの中の【食中毒】について

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