お店に集まり人につく

コラム 飲食店運営のヒント

お客様は【お店に集まり、人につく】―飲食店管理職としてやるべきこと

僕が以前働いていたお店では、
初デートからプロポーズ、そして結婚披露宴まで関わったお客様がいました。

 

指定席

そのカップルのお二人には、指定席がありました。
一番最初のデートで使用された席でした。

初デート当時、僕はまだ入社していなかったのですが、
その後、ご予約されるたびに、
そのお席を指定されるようになりました。

僕が入社後よく担当していたセクションだったこともあって、
自身も接客担当として関わることがよくありました。

 

プロポーズ

お店側としては知らなかったのですが、
ある時プロポーズをその指定席でされたそうです。
後日、お客様から教えて貰いました。

教えて貰ったのは、理由があって――

この初デートからプロポーズに至るまで、
お世話になったレストランで、結婚披露宴をしたい。

そう言ってもらえたのは、
僕がそのお店で店長になってからでした。

 

二次会はよくあったが

そのお店は200席を超える大箱だったことも、
近隣に挙式会場が多かったこともあって、
結婚披露宴の二次会が多かったお店でした。

一般営業を行いながら、パーティーフードスタイルの二次会同時進行は、
普段から行っているので長けていたのですが、

披露宴のような個別で料理を提供するスタイル、
オペレーションには長けていませんでした。
またコース料理自体も設定が無かったのです。

お受けできるかどうかでも、紆余曲折ありました。

前述のように200席を超える規模にも関わらず、
参列者は確か80名ほどだった(ような気がする)お陰で、
シェフは何とかなると思ってくれて、
その他諸々の問題もクリアして開催の運びとなりました。

 

お店として、店長として

披露宴当日の思い出もさることながら、
お店で今まで行ったことのない披露宴を、
開催できたという実績は自信につながりました。

また当日、僕は独自でカメラマンを雇い、
披露宴の一部始終を写真で映してもらいました。

この実績を形として残し、
お客様に広く見て貰い、
今後の顧客獲得の宣伝材料にしたかったからです。

もちろん、カップルのお二人にも、
快く承諾してもらえました。

その写真はアルバムにして、
店舗内のある一角を、
そのアルバムなどを置いて宣伝していました。

披露宴後も変わらず訪れてくれていたカップルは、
その一角を目にするたびに、当日を思い出せて嬉しい。
と言ってくれました。

僕にとっても、一生忘れられないカップルになりました。

 

人生の節目に

その後、その会社を退社して、
僕は違う会社へ移ることになるのですが、

後日、そのカップルから連絡があり、
「移ったお店へ食べに行きたい」と言って下さいました。

そしてそして、さらに後日、
僕が自身でお店を立ち上げた時には、
そのお店にも来てくださいました。

聞けばなんと双子のお子様が生まれたとのこと。

きっと、子供が産まれたご報告も兼ねてのご来店だと気付かされました。

久々の再会もさることながら、
カップルの人生の節目に関われている事にも、
喜びがありました。

 

初デートから披露宴のお店には

あるとき、
「その後も変わらず、あの指定席に座られているんですか?」
と聞いた事がありました。

その時、お二人は言葉を濁して、
「最近行ってない」とポツリと呟かれました。

その言葉が、僕には寂しそうに映りました。

あれだけ、人生の節目に使ってきたレストラン。
なぜ、訪れることが無くなったのだろうか――?

 

お店に来て、人につく

お客様は最初に来店された時は、
人との関わりを求めている訳ではありません。
その場での体験を求めています。

でも、何度か訪れて貰えば、
やがて人との関りを持つようになります。

そこでの温かさや優しさなどに触れて、
さらに足を運んでくれるようになります。

それがやがて居心地の良さに繋がると思います。

 

帰ってくる場所

そんな表現が合っていると思っていました。

でも行かなくなったのは、
自分たちが知るスタッフが、
一人、また一人といなくなっていけば、
きっと、温かさを感じなくなったのではないだろうか。

だからこそ、僕が移ったお店へ来てくれたのだと思っています。
温かさを求めて。

帰ってくる場所ではなく、
人に会いに来る――だったように思います。

 

お客様のリレー

ではなぜ、僕がいなくなった後の人達は、
そのカップルと関係を築けなかったのでしょうか。

一つ目は引き継ぎをしっかりできなかった僕の責任。
二つ目は変わっていくスタッフたちが、
昔から来てくれているお客様に対しての、
感情移入が出来なかったこと。

お客様をリレーしていく責任が、
お店にはあるという事です。

そして、それはお店全体で、
関わる人が多ければ多いほどいいですね。

 

「あのお客様、〇〇様と言って、常連様だから、
 新しく入った○○です。ってご挨拶してきて」

以来僕が、お店の責任者として、
お客様のリレーのために行ってきた内容の一つです。

管理職として、
お店についたお客様は、人につくことを自覚して、
チームで関わっていくことは、大事だという話でした。

ご参考になれば幸いです。

 

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