飲食店では、同時進行のタスクが混在する、
マルチタスクの典型ともいうべき職場です。
本来、新人の教育は「シングルタスク」
一つのことに集中させて、会得させていくことが多いと思いますが、
飲食店の現場の教育では、次から次へと起こることに対処しなければなりません。
このマルチタスクをどれだけ円滑に行う事が出来るかで、
満足度、生産性に大きく影響することから、
どのお店でもオペレーションの教育と熟練が欠かせません。
私が現場で培った、円滑なオペレーションは、
三つの内容から成り立ちます。
それを以下で解説させて頂きます。
1:行動指針
満足度と生産性の向上のために、行動指針などを用いて、
どう振舞えば良い成果を期待できるか?
を、言葉にしている会社があります。
私が以前在籍していた、ある会社では、
16からなる行動指針がありました。
ざっと思い出せる部分を書き出してみますと・・・
- 絶対Noと言わない
- お客様の気持ちを汲み取る
- お客様に背を向けない
- お客様とすれ違う時は立ち止まって道を譲る
- 椅子を引いて差し上げる
- 傘袋は開かせない
- お客様を見て声を出す
- 下げ物を頼まれない
- お子様の飲食は最優先
・・・半分くらいしか思い出せませんでしたが、
これらの行動指針を朝礼時に唱和して、諳んじられる様にしていたことで、
共通のルールとなり、現場での行動に大きく影響を与えていました。
会社としての目指すところが、行動指針には表れやすいと思います。
標語にして、絵に描いた餅とならないように、
それぞれが諳んじられるようになるまで落とし込むこと。
それがやがて会社・お店の文化となります。
2:1way 3job(ワンウェイ、スリージョブ)
二つ目が、マルチタスクの中身の内容です。
前述の行動指針は、それぞれのアクションを言葉でより具体的にしているのですが、
この章のタイトルに書いた「1way 3job」というのは、
マルチタスクの中で、どうタスクを処理していくか?の標語です。
一回の行動で、三つ仕事をしてきなさい。
という意味です。
その背景には、その会社はエリアごとにウェイターを配置し、
そのエリア内(概ね6~8テーブルを受け持つ)のお客様の、
来店から退店までの全てを担当する責任がありました。
ですので、一つの行動で一つの仕事しかできないと、
どうしても仕事が後手に回り、円滑に運営することが出来なくなります。
この具体的ではない言葉を、どう意識させて、身につけさせるか?
が、マルチタスクの内容は「ライブ」でもあるので、
なかなか教えるのも、その時々に成否の判断をすることも難しい内容です。
ですので、自助努力によってのみ、培われるスキルとなることが多いです。
1way 3jobの意識のさせ方
ただし、スタッフが1way,1jobしか行っていなければ、
その行動を指導することはできます。
私がよく指導していた内容の例です。
例えばお客様のテーブルに行く理由として、一番多いのが料理やドリンクを運ぶことですが、
その目的地にたどり着くまでの間、お客様とテーブルを観察することを指導します。
ルーティーンの指導
だいたい、料理・ドリンクを持って、目的のテーブルしか見ていないことが多いのですが、
その行く間の周りのテーブルを見ようよ。ということです。
そして、目的地に行った帰りに、その行く間に気付いたことを処理して帰ってくる。
もしくは、全体を必ず見てから帰ってくる。
行って帰ってくる――の中身を変えさせることがポイントです。
そうして、3つ仕事をさせることの意識を植え付けることが出来ます。
ちなみに、よく行う3jobの内容とは・・・
- 中間バッシング
- ドリンクのお代わりオススメとオーダーテイク
- (短めの)会話
- お水の継ぎ足しや提供
などが代表的です。
逆算し、準備する
三つ目が、逆算することです。
どんな仕事でも、ゴールがあって、そこから逆算することで、
良い準備が出来るようになると思います。
先手を打つからこそ、円滑に運営できるので、
逆算し、準備をすることはとても大事です。
しかし逆算は、どうしても経験値が必要です。
その経験値を持つ指導者が、次に起こることを、全体や個別に知らせ、
〇〇のために、いつまでに、〇〇をやっておきなさい。
と具体的な指示をすることで、スタッフの経験値が積まれて行きます。
ですので、責任者の経験値や、具体的な指示出しがとても重要です。
指導せずとも、それぞれのスタッフが逆算して、準備を完璧に行う。
そんな職場は中々目にすることはありませんが、
それが出来ていると、間違いなく円滑に回っています。
責任者が必要ないくらいですね。
具体的でないと・・・
余談ですが、昔いたある職場では、上司がよく
「今日は忙しいから爪先立って営業にあたるように」
と朝礼で口癖のように言っていましたが、
これでは具体的に何をやれば良いのか分かりません。
結局、今日は忙しいという心構えだけは出来ているけれど、
普通に忙しさのピークを迎えて、当然のように後手に回って、
ピークが過ぎれば、何とか乗り切ったね。で終わる。
今日は忙しいから、具体的にどんな準備をさせるのか?
それは、
ピークを迎える前までに、やるべきことの指示出しを、より具体的に行うこと。
例えば、ピークが来る前に、一旦少なくてもお皿やカトラリーのリセットを行う。
や、休憩のタイミングを事前に調整しておくことや、シフトの調整など、
責任者が行うべき打ち手は多様にあるはずですね。
要は、まだピークを迎える前にこそ、
ピークかのように全体を握ることが、責任者には必要です。
まとめ
飲食店の忙しさは、概ね偏ります。
昨日は驚くほど暇だったのに、なぜ今日はこんなに忙しいの?
どうして来客数は偏るの?
ちょうどいい感じにバラけてほしい――
と、現場で愚痴ったことは数知れず。
忙しい時ほど、焦りから生まれるミスが多く、
ヒマな時ほど、油断から生まれるミスが多い。
そんなジレンマの中で、日々現場と向き合ってきました。
それを解消できるのは、先人たちの知恵でした。
- 行動指針
- マルチタスク
- 逆算と準備
上に描いた事柄は、全て僕なりに噛み砕いて、言葉にしたものです。
ご参考になれば幸いです。
運営方法にお悩みがある方は、実際の現場で私共がお手伝いさせて頂きます。
ご興味があれば、お話だけでも聞かせて下さい。
お問い合わせはこちらから