私が携わってきた飲食店では、
とかくスタッフの定着率が課題で、
何よりの悩みでした。
おそらく、どの管理者もそうでしょう。
私が今まで経験したことを、一言でまとめると、
働き手の理想と現実のギャップ
こそが、最大の原因だと思っています。
ただし、得てしてその「理想」は、
考えが甘いことが多いのも事実ですが、
しかしながら「現実」も、大いに改善する余地がある様に思います。
今日は、その課題を明確にし、
解決のヒントを3つにまとめて下記に記しています。
1.なぜ、このお店(会社)に入ったのか?
そもそもですが、今いるスタッフたちは、
なぜこのお店(会社)に入ったのでしょう。
既存の全てのスタッフの、
働き始めた動機、背景を知っていますか?
それらはすべからく人に因り、
当然ですが一律ではありません。
この背景を知っていなければ、
個別にどう対応していくべきかも分からないはずですから、
まずはこの背景を汲み取るところから始めましょう。
それぞれのメリットとデメリット
スタッフは自分の時間を切り売りして報酬を得ている訳ですから、
働く内容の、
「自分にとってのメリットとデメリット」
を天秤にかけて判断している筈です。
初日や短期間で辞められた経験ありませんか?
私の場合は率で言うと、トータルで6~7割ほど辞められています。
これは、初日や一定期間に
(続けて行けそうにない)
という感想を持たれているからでしょうが、
それにはどんな理由があるでしょうか。
以下は私が経験した内容です。
辞める理由
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立ち仕事が向いていない
-
業務がハード(時給に見合っていない)
-
多忙過ぎて、ついて行けない
-
受け入れ態勢が不充分
-
人間関係に不安
-
その他
辞める理由には、
コントロールできない働き手側の理由と、
改善できる、お店(会社)側の原因があります。
働きたいけど辞める――
私は、働き手のそもそもの「働きたい理由」と、
けれども「辞める」という決断とのギャップを、
どう埋めるか?
こそが、定着率に大きく関わると思っています。
ですから、冒頭に書いたように、
動機と背景を知ることは重要です。
働き手側の背景をよく知っていなければ、
このギャップを埋めることが出来ません。
リーダーや管理職に携わる方々には、
スタッフ個人個人の【背景】を汲み取り、
共有する(必要であれば)ことを、
是非行って欲しいと思います。
働き続けている理由は?
逆に、今残っているスタッフたちに、
「働き続けられている理由」を聞いてみた事ありますか?
本当のところ、本音を話してくれることは少ないかもしれませんが、
この理由にこそ、それぞれのお店(会社)が
なすべき事が詰まっている(逆説的にも)のです。
2.コミュニティに必要な新陳代謝
職場とは大なり小なりコミュニティですが、
そのコミュニティの中に人を新しく入れるという事は、
それぞれが抱えるストレスが必然的に発生します。
既存スタッフにはデメリットの様にしか感じていない事を、
しっかりと言葉にして意思表示する、
理解させるという事も必要です。
新陳代謝のメリットを挙げてみましょう。
活力と多様性を保つため
-
長く同じメンバーだけで構成されると、
考え方や価値観が固定化され、閉鎖的・内向きになります。 -
新しい人の参加や、古い人の卒業・異動によって、
新しいアイデアや視点が入り、風通しが良くなるため、
改善と進化が生まれやすくなります。
参加者の成長機会をつくるため
-
一定の役割を果たした人が次のステージに移ることで、
次の人達にチャンスや責任が回るようになります。 -
コミュニティ内での「役割の偏り」や「属人化」を避けられます。
飽きや停滞を防ぐため
-
同じ顔ぶれ・同じ活動が続くと、どうしてもマンネリ化してしまいます。
-
新しい風が吹くことで、リフレッシュされた空気感や期待感が生まれ、
参加者のモチベーション維持につながります。
ストレスへの耐性を高めるために
新陳代謝が起こるたびにストレスを感じるコミュニティは、
往々にして内部で軋轢を生みやすいものです。
これは、新たなメンバーや変化を
「受け入れる側」のストレス耐性が、
十分でないことが主な原因と考えられます。
では、なぜその耐性が育たないのか。
その理由と改善策を以下に整理します。
受け入れる側にストレス耐性がない主な理由
-
長らく同じメンバーで構成されている
→ 慣れた関係性の中で安心感を得ており、新しい価値観や人材の登場に対して拒否反応を示しやすくなる。 -
新しい人と関わる経験が少ない(経験値不足)
→ 異質な存在に対して戸惑いや不安が強くなり、対応にストレスを感じやすい。 -
教育・受け入れスキルが不足している
→ 新メンバーにどう接し、どう伝えればいいかが分からず、自分のやり方を押し付けてしまう。 -
教える側の性格的な傾向
→ 柔軟性が乏しい、完璧主義傾向がある、人に期待しすぎるなど、心理的な傾向が影響しているケースもある。
耐性を育てるための改善策
-
定期的に新陳代謝を起こす仕組みをつくる
→ 新しい人を受け入れることが「日常の一部」になれば、拒否反応は減少しやすい。 -
教育や受け入れプロセスを明文化・マニュアル化する
→ 属人的な対応ではなく、誰でも一定の質で対応できる体制を整えることで、教える側の負担や不安が減る。 -
教える側の性格や特性に合わせて、教育段階を調整する
→ 苦手な人には補助的な役割から、得意な人には主担当として任せるなど、役割を柔軟に分ける工夫が必要。
新陳代謝に対するストレスは、仕組みと意識の両面で緩和できます。
「変化があるのは良いことだ」と思える文化づくりが、
健全で持続可能なコミュニティには欠かせません。
3.お客様の満足度のために、ブレない“進化”を
新陳代謝は必要だが「言い訳」にしてはならない
前述のとおり、一定の新陳代謝は健全なコミュニティや組織の運営にとって不可欠です。
しかし、定着率の低さや離職率の高さの理由にしてはいけません。
スタッフの入れ替わりが頻繁に起きてしまう現場では、
当然ながらサービスクオリティが不安定になりやすく、
それがお客様の満足度に直結してしまいます。
特にサービス業においては、「人」がそのまま「価値」になります。
人の定着がサービスの定着であり、信頼の積み重ねでもあります。
サービス業の宿命と向き合う
「スタッフが辞めてしまうのはこの業界の宿命」
と割り切ってしまうこともあるかもしれません。
しかし甘んじることなく、それを変えようとしない限り、
お客様が感じる“安心感”や“期待”に応えることはできません。
本来サービス業は、「人が人に喜んで頂く仕事」です。
だからこそ、人が辞めることの影響は、他業種以上に大きいと認識すべきです。
お客様が本当に求めていること
お客様が店舗に求めることは十人十色です。
ですが、リピーターとして通い続けてくださるお客様には、
共通する心理があります。
それは、「自分の価値観に見合ったリターンがある」ということです。
つまり、「価格」「接客」「雰囲気」「味」「タイミング」など、
何かしら自分が求める価値に合ったものが確かに存在していると感じられることが、満足と再訪につながっています。
安定と進化、その両立が“ファン”を生む
リピーターのお客様は、以下の相反する2つの欲求を持ち合わせています。
-
「今までの良さは崩してほしくない」という安心感・安定への期待
-
「進化している姿を見たい」という成長への期待
この2つを両立することができたときに、
お客様は「単なる利用者」から「ファン」へと変わっていきます。
だからこそ、スタッフの安定した在籍と、
サービスの継続的な改善が両輪となって求められるのです。
まとめ
1.スタッフの背景を知る
2.新陳代謝は必須
3.安定と進化のために
ご参考になれば幸いです。
【辞める理由に対する具体的対処例】
は別の記事のテーマとしますので、ご期待ください。