私は飲食業界においての約20年のキャリアの中、
のべ200人ほどの面接を担当してきました。
その中で、我流ながらも面接時のコツと、採用のポイントを自分なりに構築してきました。
以下はその我流でのやり方を述べさせて頂きますが、
一部の方には異論反論や、気を悪くされる等あるかと思います。
あくまでも、私自身の見解ですので、
悪しからずご了承いただきました上でご覧下さいます様、お願い致します。
時代と共に履歴書も変わった
昔と今の違いとは、例えば性別の表記が任意になったり、写真が不要になったり、
中には履歴書不要で、面接時に会社が用意したフォーマットに記載してもらうという所もあります。
その背景には、「適性、能力、経験」を重視する文化が基になっているようです。
実際、私が面接官をしたときも、履歴書はあくまで一時情報にすぎず、
拾いやすい情報があれば話題にはできますが、最も大事な内容ではなかったと感じています。
でも実は知りたい情報
驚かれるかもしれませんが、履歴書の中に「家族の勤め先」という欄が、昔は存在しました。
当然必要ない――そう思われるかもしれませんが、
実は私は「勤め先」には、さほど関心がありませんが、
ご両親が「何を生業とされているか?」と、
「ご家族構成」には、大きく関心があります。
その理由は、今まで一緒に働いて来た人に共通する内容があったからです。
- 親が自営業をされているご家庭の方
- 親が社長業をされているご家庭の方
- 片親の家庭環境で育って来られた方
経験上、上記のような家庭で育って来られた方は、
仕事に対しての責任感が大きかったり、
また接客業に必要な素養を持っていることが多かったのです。
しかし、最近では「聞く事自体が不可」とルールとして設けられています。
前述のように「適性、能力、経験」には関係ないから。が理由ですが、
私としては、適正には遠からず関係がある。という持論を持っていました。
ですので、私は冒頭に
「答えたくない質問があった場合には、答えなくて構いません」
と前置きした上で面接を開始し、
上記の様な質問に至った際に、再度お伝えしていました。
必ず答えて下さいと強要はしないことが大前提です。
実はこの質問を行っていたことが、会社にバレて注意を受けたことがあります。
この質問に対して誰かがクレームを言った訳では無く、
私の面接現場をたまたま本社の人が店舗に来ているタイミングで聞かれたことが原因でした。
ですが私は、上記の理由を挙げて、
「この代わりになる質問の仕方を教えて下さい」と開き直ったことがあります。
迷惑な社員だったと思います。(苦笑)
面接者の本質をどう見極めるか?
当然ですが、面接に来た方は概ね「猫をかぶり」ます。
良いように見せて評価されたい――
当然の心理ですし、接客業の場合、逆にそうでないと困ります。
相手を不快にさせないような立ち居振る舞いや、
受け答えが出来ないようでは、お客様相手は務まりません。
先に断っておきますが、私の面接採用時のヒット確率は80%くらいだったと思います。
中には予想に反して全然不適格な採用をしたこともありましたし、
逆にダメだろうと思っていたけれど、時間が経ってみたら大きく化けた――
そんな経験もあります。
質問内容を工夫する
面接の質問には、
検索すれば出てくる「一般的な質問」と、
「背景を汲み取る」質問があります。
一般的なものでは、
- これまでの仕事や生活の中で、誰かに喜んでもらえた経験はありますか?それはどんな場面で、どう感じましたか?
- 周囲の人からどんな人だと言われることが多いですか?それはご自身ではどう感じますか?
- なぜ接客の仕事を選ばれたのですか?どんなときにやりがいを感じますか?
- 数ある飲食店の中で、なぜ当店を選ばれたのですか?
- 以前の職場の退職理由を教えて下さい。
などがあります。
実際使っていましたが、学生アルバイトや、若い人たちの面接が主だった私の場合は、
こういった内容よりも、もっと距離感が近い質問を意識していました。
例えば、
- 尊敬する人は?
- その尊敬する理由は?
- どういう人が好き?
- どういう人が嫌い?
- 一番大事なマイルールってなに?
- 仕事が出来るってどういうこと?
他にもありますが、シンプルな質問ほど「人となり」が現れると思っていて、
実際にそんなやり取りから言葉の断片を拾い、人柄を汲み取っていきます。
特に「尊敬する人」のくだりでは、
前述のように人生経験が浅い若者の場合、概ね両親のどちらか(どちらも)か、
学校の先生が一番多い回答です。
そこでの違う回答は、とても興味深い回答もありましたし、
逆に違和感を感じることもありました。
人柄を汲み取るのに、私がもっとも使った質問です。
気持ちを汲み取ること
接客業に最も大事な素養は、ここに尽きると私は思っています。
こうかな?これだと嬉しいかな?を想像する(できる)ことです。
気持ちを汲み取ることは、スタッフにも当てはまります。
ですので、気持ちを汲み取ろうとする姿勢を見せて、
逆にその気持ちを汲み取ってもらえている、もしくは努力しているように感じるかの感覚を大事にします。
面接のポイントは簡単な質問を重ねることで、
安心させて距離感を詰めていき、まずは自然な笑顔を引き出すこと。
緊張をほぐしてリラックスさせること。
汲み取る姿勢を見せても違和感を感じるときは、
自身の実力不足もありますが、相手の姿勢によることもあります。
もちろん、面接官との相性もあるでしょう。
大事なのは、お客様に同様の違和感を与える可能性は無いか?
を基準に感じることが必要不可欠だと思っています。
条件だけが理由なのは?
時給や場所が発端で面接に来ることがほとんどだと思います。
が、それだけに価値を見出しているように感じる場合は、
概ねダメなことが多いのが経験値としてあります。
面接時に条件や働き方のことばかりを題材にした質問に終始される方は、
だいたい上手くいきません。
もちろん時間を切り売りして働く面接者としては重要なことでありますし、
否定する訳ではないのですが、同じ方向を見てくれない事に繋がってしまいます。
ですので、やはり「どんな価値を提供して喜んでもらいたいのか」という、
お店(会社)としてのビジョンとコンセプトをしっかり打ち出すことは重要です。
それが無いと、面接者も当然、条件だけに終始することになってしまいます。
ビジョンとコンセプト
逆を言えば、面接官にも面接基準は備わっていなければなりません。
その根幹を成すものが前述のビジョンとコンセプトです。
それらを踏まえた上で、合った人を採用する――
が、本来の正しい形です。
しかしながら、そのビジョンとコンセプトは、
入った後に躾けていくという言い方もあっています。
ですので採用のポイントは、
ビジョンとコンセプトに「共感できるか?」と、
「素直な人柄か?」を、私はとても重要視していました。
接客業において何より大事な素養
特に素直さは、必須だと思っています。
接客業とは、人と人との関係で成り立つものだからこそ、
欠かすことが出来ない素養であり、躾けていく部分であると思っています。
そしてそれを指導する管理職にとっても忘れてはならない、
一生精進するべきことだと思っています。
まとめ
私が経験してきた職場の中で、ある上司がこう言っていました。
「マネージャーとは、トンネルの先の出口の光を見させる人だ」
暗闇の中を彷徨わせるのではなく、しっかりと行く方向を指し示せる人、
言い換えれば光を見させることが出来る人。
面接・採用とは、
同じ船に乗る、チームの仲間を迎え入れる人選をするということです。
ご自身が船長の立場であるなら、
同じ船に乗った人の責任を持てるか?
の判断を下さなければなりません。
時に自分から降りる人もいれば、
降ろされる人もいるでしょう。
しかし、船に乗っている以上は責任を持つ。
その覚悟を決めるのに、たかだか小一時間くらいの面接時間では、物足りないのは当然です。
ですので、伝えるべきこと――
私はビジョンとコンセプトが最も重要だと思っていますが――
を、面接官の中で統一し、それらを伝えることと、
相手を汲み取る質問を用意(準備)することが、何より大事です。
汲み取れたかどうかの答え合わせは、一緒に働いてからでないと分かりません。
が、どういう質問なら汲み取れたか?の経験値を増やしていくことが大事です。
それぞれのやり方もあるでしょうから、是非お考えになってみて下さい。
ご参考になれば幸いです。
選べる立場になるためには?
「サービス業に向いているスタッフ採用のポイントと面接のコツ」
という題材で自身の経験を基に色々と書いてきましたが、
まず何より、そもそも応募者が多くないと成り立ちません。
選べる立場にならないとダメだという事です。
では、より多くの方に応募してもらうには?
少し違う話になってしまいますので、
以下にリンクを貼っておきます。
よろしければご参照ください。