飲食店は口にする物を扱う、いうなれば「命」を預かる職場です。
衛生面の責任は甚大という言葉が合っていると思います。
それが基本であり、責任が重いので、
飲食店キッチンの修業は厳しい――。
技術だけではなく、心の修業が必須と言われる所以です。
そして何より、正しい知識を得ることも必須です。
事故の後に法律が刷新される
これまでの数々の事故をもとに、
その都度法律も変わってきました。
例えば、ユッケ。
ユッケが食べられなくなった主な理由は、2011年に発生した大規模な集団食中毒事件が原因です。この事件では、ユッケを食べた181人が腸管出血性大腸菌に感染し、うち5人が死亡するという甚大な被害が出ました。
この事件をきっかけに、生食用牛肉の衛生管理が厳格化され、ユッケを提供する際には、生食用食肉の規格基準を満たす必要があると定められました。
2011年の出来事でしたので、覚えている人も多いかと思いますが、
事件を起こした会社は、基本的な処置を行っていなかったための原因でした。
事件を起こした焼肉店では、生食用ではない牛肉をユッケとして提供していたことや、表面のトリミングを十分に行っていなかったことが原因とされています
注)納入先の精肉販売業者の責任もあるとみられています。出典元
どちらにせよ、経営陣と現場の両方での、
人の命を預かっている意識の欠如がもたらした結果でした。
仕組みにする
僕が以前勤めていた、グローバルダイニングという会社では、
当時店長、料理長になるためには、
-
防火管理者
-
調理師免許(もしくは食品衛生管理者)
の資格を有していないと、責任者になれない。
というルールがあり、もし資格を有していなければ、
給与の一部(%)がカットされるという決まりがありました。
どちらも、店で起こしてはいけない、
営業できなくなる代表的なもの(火事・食中毒)だからこそ、
リーダーとなるべき人には、
- しっかりとした知識を有してもらう。
- そして指導、監督してもらう。
会社として、模範的な仕組みだと思います。
もう一つ、仕組みとしてHACCP(ハサップ)がありますが、
これはこの記事では割愛いたします。
【命を預かっている】という躾
僕が初めてキッチン業務をしたときのこと――
ある日、まかないの休憩中にシェフが語り始めました。
シェフ自身がまだ修行中だった時のことです。
いつもは営業開始前に来るシェフが、その日朝早くに出勤してきた。
ドキドキしつつ、作業しながら横目で見ていると、
おもむろに冷蔵庫の中の物を全て出し始めた。一通り出し終わったら、今度は冷蔵庫の中を拭き始めた。
慌てて「代わります、自分がやります」と言っても、
「黙ってろ」と、代わらせてもらえない。そして拭き終わると、その雑巾を目の前に持って来て、
「これで顔を拭いてみろ」と言われた。思わずたじろいだら、その反応とともに、拳が飛んできた。
そして、シェフは言ったそうです。
俺たちは人の命を預かる仕事をしているんだ。
口に運ばれる食材を保管している場所は、
顔が拭けるほど綺麗にしておくんだ
このシェフのようなリーダーがいる飲食店なら、
決して食中毒は起こらない。
そう思います。
監督・指導しなければ
そのシェフからのお話の後、
忙しさにかまけていたら、
雷が飛んできました。
お前ら、何にも感じないんだな
そういったお話を聞いて、なるほどと思ったのなら、
そのすぐ後に僕たちも冷蔵庫の中を掃除しなければ、
聞いた事になりません。
今度は僕たちに拳が飛んできました。
拳はともかく、
【人の命を預かる仕事】
の意識は受け継いでいくべきことだと思います。
やはり現場のリーダーが、常日頃から「安全性」を伝えているか?
その意識をもって、指導・監督していなければ、いとも容易く崩れます。
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この記事の意識の話とは違う、
具体的な手法で余談ですが、
やはり【手洗いが最も基本】です。
今この記事を書いているのは梅雨本番の時期ですが、
ここからもっとも注意すべき時期となります。
飲食業に関わる皆さま、是非今一度、
衛生面の再確認を行ってみてはいかがでしょうか。
