シフト作成のヒント
さて、生産性の次は、いよいよ人件費コントロールのキモでもある、
シフト作成のお話です。
シフト作成は、
攻め(売上機会の損失がないように)と、
守り(無駄なコストがかかっていないか)に直結するので、
とてもとても重要です。
単にパズルの組み合わせではなく、
大事な要素が、
- 予知能力
- 修正力
- 交渉力
です。
それぞれ説明していく前に、大前提の決まり事を作っておくことも重要です。
決まり事とは、シフト作成でのスタッフとの約束です。
これがあるかないかで、信頼関係や、マネージメントに大きく影響します。
説明していきましょう。
大前提のお約束
私が今まで作成してきたシフトは全て、
毎月前半(1~15日まで)と、後半(16~月末)シフトで、
半月ごとの作成でした。
そして、こちらから約束することと、
スタッフに約束して欲しいことを、
面接の段階で必ず伝えて、
それを了承してもらったうえで、採用する。
そういった形をとっていました。
スタッフに約束すること、約束してもらうこと。
私がスタッフに約束していたこと、してもらったことが以下です。
毎月の前半シフト(1~15日)に関しては、
前月20日までに申告してもらい、25日までに確定。
後半シフト(16~月末)に関しては、
当月5日までに申告してもらい、10日までに確定。
この申告から確定までの間に、
スタッフからの変更希望があった場合は、全て受けます。
但し、申告期限(20と5日)は変わりませんが、
シフト調整が容易い場合――そんなケースはほぼ皆無でしたが、
期日の前に確定することはあります。と伝えていました。
最終的な期日を提示することによって、必ず〇日までにシフトが決まる――
その約束をするのです。
その代わり、シフトが確定した後に、自己都合でシフトを変更したい場合は、
必ず自分で代わりを探してください。
というのが、採用時にスタッフに約束してもらった内容でした。
「それは、病欠などを含みます。
なので、日頃から体調管理はしっかりしてください。
また、具合が悪いなと思ったら、早めに手を打ってください。」
と、これは入社後のオリエンテーションの際に伝えていました。
実は、平気で当欠する人が多いから、そう言わざるを得なくなった――
という背景があります。
約束しないから、守られない。
シフトに関しての約束を先に守る。
からこそ、そちらも約束してね。というのがキモです。
この、シフト完成の期限が曖昧なお店が多いように感じます。
どうしても調整が捗らないと、遅れがちなのはよく分かるのですが、
作成が不十分であったとしても、期限内に必ずリリースする。が必要だと思っています。
変わる可能性がある場合には、事前に該当者に打診して、
了承を得ておくなどの対策をすることで、信頼を得るようにしましょう。
シフトが中々確定しないことが当たり前になると、
潜在的に(いい加減)という印象を与えることになります。
先に約束を守るからこそ、安易に穴を空けないでねという、
いわゆる当欠の防止に説得力をもちます。
さて、余談ですが病欠や、家族がいる方は子供の体調不良などは唐突なもので、
そういった時には、もちろん代わりがいなくとも当欠してもらっていました。
しかし、その際にどういった言動をしているかで、その人となりは見えるものです。
スタッフを定性評価する内容として、大事だと思っています。
ヒント3:予知能力とは事前情報の収集
経験が浅い人は、人員を平均的に「ならす」ことに主眼を置き、
経験値がある人は、人の流れを予測して「強弱をつける」ことができます。
とはいえ、その予測通りにいかない事もままありますよね。
その精度を高めるために、情報は多ければ多いほどいいです。
予知能力とは、
「情報を網羅して、当日を予測する」
という事になるのですが、
では、何から情報を収集すべきなのでしょうか。
以下が、私が考える代表的な内容です。
- 近辺のイベント
- 前年同月同曜日の売上
- 過去の日報
- 店舗の予約状況
- 天候
イベントの把握
サービス業は、どうしても世間の状況に左右されます。
その最たるものが、イベントです。
前年同月同曜日の売上は、そのイベントを知るためのとても大事な情報です。
そして過去の日報も、実はそうなのですが、
日報に何を書くかをそもそも決めていないと、さして情報源にならない事もあります。
これはまた別の話なので割愛しますが、何を書くか?は、今後のために重要だという事だけは覚えておいて下さい。
イベント情報の収集方法
私がお店を営んでいた際に、近隣にお住いの主婦のスタッフからの情報はとても有効でした。
学校行事を網羅できる事と、その主婦の方を通じて情報発信も出来たからです。
ですので、近隣にお住いの主婦の方が、
スタッフの一員であることは、とても重要です。
また近隣の会社の行事、決算時期、定期的な打ち上げ――
ランチでお越し頂く、近隣企業の常連様からや、
私は店のすぐ近くの美容室へ通っていたのですが、
そこからの情報収集が、イベントの把握にとても役立ちました。
情報収集のルートと項目が多種多様だと、判断の精度が上がることから、
是非、色々と情報源の開拓と、教えて貰うように努めることが大事ですね。
ヒント4:修正力とは、日々先のことを考えるクセをつけること
シフト作成は、出来上がって終わりではありません。
常に現在進行形で微調整していくべきものです。
シフト作成の際に極力修正しなくてもいいように、
手を尽くすべきではあるのですが、なかなか上手くはいきません。
リーダーやマネージメントに携わる人の修正力は不可欠です。
予約状況と天候
予約状況と天候に関しては、ある程度事前に把握できている場合と、
直前にしか把握できない場合がありますが、
どうしても後者が多いですよね。
しかし、直前でヒマであろうと分かった時に、
人員過多で休みたい人を募るなどして、もし希望者がいればラッキーですが、
いないから仕方がない――と、安易に削るのはお勧めできません。
前述のように、シフトは約束ですから、簡単に反故にしてしまっては、信頼関係が崩れます。
かといって、仕方ないと飲み込むことが出来るのか?
ここぞとばかりに掃除を入れたり、何かしらの業務を入れたり、
はたまた研修したり、新たなメニューを試作してみたり、
その時にしかできない事もありますね。
それでも、無駄が多すぎると判断した場合は、どうするか――
シフトを削るデッドラインはどこか?
私は、極力三日前、最悪二日前までに決めるようにしていました。
理由は二つ。
一つには、
例えば予約のキャンセルポリシーでは、
「コースは前日までにキャンセルが無ければ、当日100%の保証」
のように、お店側がお客様との約束をしているのと同じで、
スタッフにもキャンセル期限を設定する必要があるとの思いから。
二つには、最悪前々日前までなら、今どきタイミーなどの隙間バイトアプリの活用で、
スポットのアルバイトに行く対応が出来る――という理由です。
人によっては難しいかもしれませんが、
後述する「メリットを与える方法」と合わせて考えて貰うと、やりやすいです。
それ以降は、人員過多でも堪えるしかない。
そう考えると、デッドラインを意識して判断する材料を集めるようになりますし、
ここまでに決断するという明確な基準が出来ます。
日々、三日以降のシフトを、天候と予約を鑑みながら、
微調整していくことが出来るのです。
くれぐれも――当日シフトカットだけは絶対にしてはいけません。
ヒント5:交渉力とは、相手の「ラッキー」を引き出すこと
スタッフとシフト交渉をすること――
飲食マネージメント職の大きな課題です。
労働力を提供してもらう代わりに、給与を発生させる。
その仕組みの「交渉を担っている」のですから、
お互いに利が無いと成立しません。
不思議とこの感覚がない人が多いように感じます。
これからの人員不足を乗り切るのに、
「働いてもらうスタッフにもメリットがあるか」
を考えることは、とても重要だと思います。
交渉力は、相手にも利があることに尽きると思います。
スポットのスタッフを増やしたいときには――
人手が足りないが、どうしても必要な時にはどうするかー
当たり前に皆さん知恵を巡らせて、色々と打ち手を考えておられると思いますが、
私がこれまでに利用した方法――
- 派遣(今ならタイミーもそうでしょうか)
- 過去のスタッフへの声掛け
- Facebookで知人へ呼びかけ
などですが、それぞれお店に見合ったやり方があると思います。
ぜひ、横と縦の繫がりを駆使して、声をかけてみて下さい。
あまり大きな声では言えない、裏技の話――
前述の「スタッフにもメリットがある」は、
分かり易く言えば、スタッフが「ラッキー」と思える内容にするという事です。
下のリンクの【生産性】でのお話でも挙げましたが、
時給のダイナミック・プライシングを、活用するという手法が有効だったりします。
そのダイナミック・プライシングを、スタッフが納得できる形で提供する。
例えば、以下は想像にしか過ぎませんが――
ランチのピークである、12時~13:30までだけ入ってくれるスタッフがいたとしたら、
私だったら、時給は2000円払っても欲しいです。
その時間帯だけでも働けるという事は、きっとご近所さんにしかできないはずですから、
交通費もかからずに済みます。
一日3000円のコストで、少しでもストレスが減り、
少しでも回転数が上がれば、万々歳じゃないでしょうか。
でも、この人がもっと長い時間働くとすれば、
その時は一般的な時給にする。で良いと思います。
その「ダイナミックプライシング」をどう活用するか?
前述の人員カットも、交渉力で相手の「ラッキー」を引き出せれば、
合意してくれることもあるかもしれません。
以上が、私が現場で培ってきた【人件費のマネージメント】のお話でした。
ご参考になれば幸いです。
――あわせて読んで欲しい、【生産性】のお話