オペレーション 事例集 飲食店運営のヒント

飲食店のマネージメントに必要な【人件費コントロール】のための5つのヒント:シフト作成編

 

シフト作成のヒント

さて、生産性の次は、いよいよ人件費コントロールのキモでもある、
シフト作成のお話です。

シフト作成は、
攻め(売上機会の損失がないように)と、
守り(無駄なコストがかかっていないか)に直結するので、
とてもとても重要です。

単にパズルの組み合わせではなく、
大事な要素が、

  • 予知能力
  • 修正力
  • 交渉力

です。
それぞれ説明していく前に、大前提の決まり事を作っておくことも重要です。

決まり事とは、シフト作成でのスタッフとの約束です。
これがあるかないかで、信頼関係や、マネージメントに大きく影響します。

説明していきましょう。

 

大前提のお約束

私が今まで作成してきたシフトは全て、
毎月前半(1~15日まで)と、後半(16~月末)シフトで、
半月ごとの作成でした。

そして、こちらから約束することと、
スタッフに約束して欲しいことを、

面接の段階で必ず伝えて、
それを了承してもらったうえで、採用する。
そういった形をとっていました。

約束

 

スタッフに約束すること、約束してもらうこと。

私がスタッフに約束していたこと、してもらったことが以下です。

毎月の前半シフト(1~15日)に関しては、
前月20日までに申告してもらい、25日までに確定

後半シフト(16~月末)に関しては、
当月5日までに申告してもらい、10日までに確定

この申告から確定までの間に、
スタッフからの変更希望があった場合は、全て受けます

但し、申告期限(20と5日)は変わりませんが、
シフト調整が容易い場合――そんなケースはほぼ皆無でしたが、
期日の前に確定することはあります。と伝えていました。

最終的な期日を提示することによって、必ず〇日までにシフトが決まる――
その約束をするのです。

 

その代わり、シフトが確定した後に、自己都合でシフトを変更したい場合は、
必ず自分で代わりを探してください
というのが、採用時にスタッフに約束してもらった内容でした。

「それは、病欠などを含みます。
なので、日頃から体調管理はしっかりしてください。
また、具合が悪いなと思ったら、早めに手を打ってください。」

と、これは入社後のオリエンテーションの際に伝えていました。
実は、平気で当欠する人が多いから、そう言わざるを得なくなった――
という背景があります。

 

約束しないから、守られない。

シフトに関しての約束を先に守る。
からこそ、そちらも約束してね。というのがキモです。

この、シフト完成の期限が曖昧なお店が多いように感じます。
どうしても調整が捗らないと、遅れがちなのはよく分かるのですが、
作成が不十分であったとしても、期限内に必ずリリースする。が必要だと思っています。

変わる可能性がある場合には、事前に該当者に打診して、
了承を得ておくなどの対策をすることで、信頼を得るようにしましょう。

シフトが中々確定しないことが当たり前になると、
潜在的に(いい加減)という印象を与えることになります。

先に約束を守るからこそ、安易に穴を空けないでねという、
いわゆる当欠の防止に説得力をもちます。

 

さて、余談ですが病欠や、家族がいる方は子供の体調不良などは唐突なもので、
そういった時には、もちろん代わりがいなくとも当欠してもらっていました。

しかし、その際にどういった言動をしているかで、その人となりは見えるものです。
スタッフを定性評価する内容として、大事だと思っています。

評価

 

 

ヒント3:予知能力とは事前情報の収集

経験が浅い人は、人員を平均的に「ならす」ことに主眼を置き、
経験値がある人は、人の流れを予測して「強弱をつける」ことができます。

とはいえ、その予測通りにいかない事もままありますよね。
その精度を高めるために、情報は多ければ多いほどいいです。

予知能力とは、
「情報を網羅して、当日を予測する」
という事になるのですが、
では、何から情報を収集すべきなのでしょうか。

以下が、私が考える代表的な内容です。

  • 近辺のイベント
  • 前年同月同曜日の売上
  • 過去の日報
  • 店舗の予約状況
  • 天候

イベントの把握

サービス業は、どうしても世間の状況に左右されます。
その最たるものが、イベントです。

前年同月同曜日の売上は、そのイベントを知るためのとても大事な情報です。

そして過去の日報も、実はそうなのですが、
日報に何を書くかをそもそも決めていないと、さして情報源にならない事もあります。
これはまた別の話なので割愛しますが、何を書くか?は、今後のために重要だという事だけは覚えておいて下さい。

イベント情報の収集方法

私がお店を営んでいた際に、近隣にお住いの主婦のスタッフからの情報はとても有効でした。
学校行事を網羅できる事と、その主婦の方を通じて情報発信も出来たからです。

ですので、近隣にお住いの主婦の方が、
スタッフの一員であることは、とても重要です。

また近隣の会社の行事、決算時期、定期的な打ち上げ――
ランチでお越し頂く、近隣企業の常連様からや、
私は店のすぐ近くの美容室へ通っていたのですが、
そこからの情報収集が、イベントの把握にとても役立ちました。

情報収集のルートと項目が多種多様だと、判断の精度が上がることから、
是非、色々と情報源の開拓と、教えて貰うように努めることが大事ですね。

 

 

ヒント4:修正力とは、日々先のことを考えるクセをつけること

シフト作成は、出来上がって終わりではありません
常に現在進行形で微調整していくべきものです。

シフト作成の際に極力修正しなくてもいいように、
手を尽くすべきではあるのですが、なかなか上手くはいきません。

リーダーやマネージメントに携わる人の修正力は不可欠です。

 

予約状況と天候

予約状況と天候に関しては、ある程度事前に把握できている場合と、
直前にしか把握できない場合がありますが、
どうしても後者が多いですよね。

しかし、直前でヒマであろうと分かった時に、
人員過多で休みたい人を募るなどして、もし希望者がいればラッキーですが、
いないから仕方がない――と、安易に削るのはお勧めできません。
前述のように、シフトは約束ですから、簡単に反故にしてしまっては、信頼関係が崩れます

 

かといって、仕方ないと飲み込むことが出来るのか?
ここぞとばかりに掃除を入れたり、何かしらの業務を入れたり、
はたまた研修したり、新たなメニューを試作してみたり、
その時にしかできない事もありますね。

それでも、無駄が多すぎると判断した場合は、どうするか――

 

シフトを削るデッドラインはどこか?

私は、極力三日前、最悪二日前までに決めるようにしていました。
理由は二つ。

一つには、
例えば予約のキャンセルポリシーでは、
コースは前日までにキャンセルが無ければ、当日100%の保証
のように、お店側がお客様との約束をしているのと同じで、
スタッフにもキャンセル期限を設定する必要があるとの思いから。

二つには、最悪前々日前までなら、今どきタイミーなどの隙間バイトアプリの活用で、
スポットのアルバイトに行く対応が出来る――という理由です。

人によっては難しいかもしれませんが、
後述する「メリットを与える方法」と合わせて考えて貰うと、やりやすいです。

それ以降は、人員過多でも堪えるしかない。
そう考えると、デッドラインを意識して判断する材料を集めるようになりますし、
ここまでに決断するという明確な基準が出来ます。

日々、三日以降のシフトを、天候と予約を鑑みながら、
微調整していくことが出来るのです。

くれぐれも――当日シフトカットだけは絶対にしてはいけません。

 

 

ヒント5:交渉力とは、相手の「ラッキー」を引き出すこと

スタッフとシフト交渉をすること――

飲食マネージメント職の大きな課題です。

労働力を提供してもらう代わりに、給与を発生させる。
その仕組みの「交渉を担っている」のですから、
お互いに利が無いと成立しません。
不思議とこの感覚がない人が多いように感じます。

これからの人員不足を乗り切るのに、
働いてもらうスタッフにもメリットがあるか
を考えることは、とても重要だと思います。

交渉力は、相手にも利があることに尽きると思います。

 

スポットのスタッフを増やしたいときには――

人手が足りないが、どうしても必要な時にはどうするかー

当たり前に皆さん知恵を巡らせて、色々と打ち手を考えておられると思いますが、
私がこれまでに利用した方法――

  • 派遣(今ならタイミーもそうでしょうか)
  • 過去のスタッフへの声掛け
  • Facebookで知人へ呼びかけ

などですが、それぞれお店に見合ったやり方があると思います。
ぜひ、横と縦の繫がりを駆使して、声をかけてみて下さい。

 

あまり大きな声では言えない、裏技の話――

前述の「スタッフにもメリットがある」は、
分かり易く言えば、スタッフが「ラッキー」と思える内容にするという事です。

下のリンクの【生産性】でのお話でも挙げましたが、
時給のダイナミック・プライシングを、活用するという手法が有効だったりします。

そのダイナミック・プライシングを、スタッフが納得できる形で提供する。
例えば、以下は想像にしか過ぎませんが――

ランチのピークである、12時~13:30までだけ入ってくれるスタッフがいたとしたら、
私だったら、時給は2000円払っても欲しいです。

その時間帯だけでも働けるという事は、きっとご近所さんにしかできないはずですから、
交通費もかからずに済みます。

一日3000円のコストで、少しでもストレスが減り、
少しでも回転数が上がれば、万々歳じゃないでしょうか。

でも、この人がもっと長い時間働くとすれば、
その時は一般的な時給にする。で良いと思います。

 

その「ダイナミックプライシング」をどう活用するか?
前述の人員カットも、交渉力で相手の「ラッキー」を引き出せれば、
合意してくれることもあるかもしれません。

 

以上が、私が現場で培ってきた【人件費のマネージメント】のお話でした。
ご参考になれば幸いです。

 

――あわせて読んで欲しい、【生産性】のお話

-オペレーション, 事例集, 飲食店運営のヒント