人件費のコントロールは飲食店経営の永遠のテーマ
飲食店経営者や店長にとって、人件費のコントロールは非常に難しい問題です。
売上を伸ばしたい。
しかし人件費は抑えたい。
人が足りなければサービスレベルが落ちる。
人を増やせば利益が減る。
私自身、20年以上にわたり飲食店のマネージメントに携わってきましたが、人件費は常に頭を悩ませるテーマでした。
ただ、経験を重ねる中で気付いたことがあります。
それは、
どうやって生産性を上げるかが重要
だということです。
F&Lコストだけを見ていては判断を誤る
飲食店では、
Food(原価)
Labor(人件費)
を合わせたF&Lコストで管理することが一般的です。
業態にもよりますが、60%前後を目安にしている店舗も多いでしょう。
しかし本当に見るべきなのは、
人件費率ではなく、人件費の中身
です。
同じ時給1200円でも、
・4テーブルしか見られない人
・8テーブル担当できる人
では、生産性がまったく違います。
グローバルダイニングで学んだ生産性の考え方
私が在籍していたグローバルダイニングでは、非常に分かりやすい考え方がありました。
担当できるテーブル数によって評価されるのです。
例えば、
4テーブル担当
↓
6テーブル担当
↓
8テーブル担当
↓
13テーブル担当
というように責任範囲が増えていきます。
当然ながら、それに応じて時給も上がります。
当時、
4テーブル担当:850円
13テーブル担当:1250円
でした。
単純計算すると、
850円 ÷ 4テーブル
=212円
1250円 ÷ 13テーブル
=96円
一見すると時給は高くなっています。
しかし店舗から見れば、一卓あたりのコストは大きく下がっているのです。
これが生産性です。
優秀な人材は「高い」わけではない
現場ではよく、
「時給を上げると人件費が増える」
と考えがちです。
しかし実際は逆の場合があります。
例えば、
時給1200円のスタッフ3人で営業している場合。
1時間あたり3600円です。
一方、
時給1500円の優秀なスタッフ2人で同じ売上・同じ満足度を維持できるなら、
1時間あたり3000円です。
時給は高い。
しかし人件費総額は低い。
そして顧客満足度も落ちない。
これは極端な例ですが、
「時給」だけを見ていると見落としがちな視点です。
人は不公平感で辞めていく
私がこれまで経験してきた中で、優秀なスタッフが辞める理由の多くは、
仕事が大変だから
ではありません。
不公平感です。
例えば、
後輩を教えている。
責任ある仕事を任されている。
売上にも貢献している。
それなのに昇給額は年間50円。
一方で最低賃金改定によって全員一律で時給が上がる。
こうなると、
「頑張る意味がない」
と感じる人が出てきます。
そして皮肉なことに、
そう感じる人ほど優秀な人材であることが多いのです。
土日祝日だけ時給を上げるという選択
私が統括マネージャー時代に何度も提案したのが、
土日祝日時給アップ
でした。
飲食店にとって最も忙しい曜日。
しかし最も人が集まりにくい曜日でもあります。
結果として導入後、
劇的に出勤人数が増えたわけではありません。
ただし、
元々出勤してくれていたスタッフの不公平感は減りました。
ここが重要です。
人件費施策とは、
人数を増やすだけではなく、
納得感を作ることでもあるのです。
人件費コントロールの本質
人件費コントロールというと、
シフトを削る。
人数を減らす。
残業を減らす。
そういった話になりがちです。
しかし本質は、
生産性の高い人材をどう育て、どう残すか
です。
そしてそのためには、
・評価基準を明確にする
・成果に応じて報いる
・不公平感を減らす
という仕組みづくりが必要になります。
まとめ
人件費は削るための数字ではありません。
売上を生み出すための投資です。
だからこそ、
「いくら払うか」
ではなく、
「どれだけの価値を生み出しているか」
を見る必要があります。
そして、生産性の高い人材ほど評価される仕組みを作ること。
それが結果として、人件費の最適化につながるのだと思います。
――後編へ続く
