飲食店で働いていると、忘れられないお客様がいます。
私が以前勤めていたレストランにも、そんなお客様がいました。
初めてのデート。
プロポーズ。
そして結婚披露宴。
人生の大切な節目を、ひとつのレストランで過ごしてくださったお二人です。
しかし、ある日気付かされました。
「あれほど思い出のある店なのに、なぜ足が遠のいてしまったのだろう?」
今日は、そんな体験から学んだ「常連客との関係づくり」についてお話したいと思います。
すべては一つの席から始まった
そのお二人には、いつも指定される席がありました。
初めてのデートで利用した席です。
私が入社する以前から利用されていたそうですが、その後も予約のたびに同じ席を希望されていました。
私が担当することの多いエリアだったこともあり、自然と顔を覚え、お話をするようになりました。
当時はまだ知りませんでしたが、その席でプロポーズもされたそうです。
後日、ご本人たちから聞かせていただきました。
「この店で結婚披露宴をしたい」
その言葉を聞いたのは、私が店長になった頃でした。
「初デートからプロポーズまでお世話になったこのレストランで、結婚披露宴をしたいんです。」
そう言っていただいた時の感動は、今でも忘れられません。
しかし、その店は200席を超える大型レストランで、二次会の実績は豊富だったものの、披露宴のような形式は未経験でした。
料理の構成も。
オペレーションも。
進行も。
すべてが手探りです。
シェフやスタッフと何度も話し合い、なんとか開催にこぎつけました。
当日は無事に披露宴を終えることができ、お店にとっても大きな自信になりました。
お客様の人生の節目に関われる喜び
披露宴後も、お二人は変わらず来店してくださいました。
私は独自にカメラマンを手配し、その披露宴の様子をアルバムにまとめて店内に置いていました。
そのアルバムを見るたびに、
「懐かしいですね」
「また来られて嬉しいです」
そんな会話が生まれました。
やがて私がその会社を退職し、別の店へ移った後も、お二人はわざわざ会いに来てくださいました。
さらに独立して自分の店を持った時にも、足を運んでくださいました。
その時には、双子のお子様まで生まれていました。
お客様の人生の節目に関わらせていただける。
サービス業の大きな喜びの一つです。
それなのに、あの店へは行かなくなった
ある日、ふと思って聞いてみました。
「今でもあの席に座られているんですか?」
すると、お二人は少し言葉を濁しながら、
「最近は行っていないんです」
と答えました。
私は少し寂しい気持ちになりました。
初デート。
プロポーズ。
披露宴。
人生の節目を過ごしたレストランなのに、なぜ足が遠のいてしまったのだろう。
その理由を考えた時、一つの答えにたどり着きました。
お客様は店に来て、人につく
お客様は最初からスタッフに会いに来るわけではありません。
料理や空間、雰囲気を求めて来店されます。
しかし何度も通ってくださるうちに、少しずつ人との関係が生まれます。
「あのスタッフがいるから」
「話を覚えていてくれるから」
「居心地がいいから」
そうしてお店は、単なる飲食店から「帰ってきたくなる場所」へ変わっていくのです。
そして気付けば、お客様は店だけではなく、人との関係性にも価値を感じるようになります。
管理職の仕事は「お客様を引き継ぐこと」
では、なぜそのお二人は足が遠のいたのでしょうか。
私はこう考えています。
私自身が、お客様を次の世代へ引き継げなかったからです。
常連様の背景。
思い出。
好み。
関係性。
それらをチームで共有し、次のスタッフへ繋げる努力が足りなかったのだと思います。
だから私は、その後責任者になってから、新しく入ったスタッフへ必ずこう伝えるようになりました。
「〇〇様は長く通ってくださっている大切なお客様だから、まずご挨拶してきて。」
お客様との関係は、担当者個人のものではありません。
お店全体で守り、引き継いでいくものです。
まとめ|常連客は「引き継ぐ」もの
常連客は、お店の財産です。
しかし、その財産は放っておけば失われます。
スタッフが変わるたびに関係が途切れていては、長く愛される店にはなれません。
だからこそ管理職には、
・お客様情報の共有
・新人スタッフへの紹介
・接客の引き継ぎ
・関係性の可視化
が求められます。
お客様は店に来て、人につく。
そして、その人との関係をチームで受け継いでいく。
それもまた、飲食店の大切なマネージメントの一つだと私は考えています。
常連客づくりやスタッフ教育でお悩みの方へ
DUEでは、飲食店の現場経験をもとに、
・スタッフ教育
・接客基準の策定
・オペレーション改善
・顧客情報共有の仕組みづくり
などを支援しています。
「人が辞めても、お客様との関係が続くお店づくり」
にご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。

