飲食店の新規開業には、多大な労力が必要です。
やるべきことは多岐に渡り、しかもそれぞれが同時進行で進んでいきます。
厨房機器。
備品。
メニュー。
人材。
導線。
POS。
保健所。
消防。
研修。
その全ての進捗を把握し、交通整理していくのが責任者の役目です。
ですが、新規開業の現場では、時としてこんなことが起こります。
「あれ?これって誰が管理してるんだっけ?」
そして確認してみると、
――実は誰もやっていなかった。
そんな、笑い話にもならない“ブラックホール”が生まれることがあります。
今日は、私が先月携わった新規開業案件の中で、特に大変だったことを通して、
「備品納品を一日にまとめる重要性」
について書いてみたいと思います。
なぜ備品納品を一日にまとめるべきなのか
これは、以前ある新規開業案件で、長の方から教わったことです。
その方は、海外の大手コーヒーチェーンの日本進出時から携わり、
その後、東海地区全体を任された経歴を持つ、新規開業のプロフェッショナルでした。
その方が、こんなことを仰っていました。
「備品関係の納品は、できる限り一日にまとめた方がいい」
「その日は、片付けと配置決めだけに集中した方が、結果的に効率がいい」
経験から来る、明確な指示でした。
飲食店の新規開業で最も大変なこと
“身体が覚えていない”
私はこれまで、10店舗以上の新規開業に携わってきました。
その中で、毎回強く感じることがあります。
それは、
“身体が覚えていない”
ということです。
例えば、
- 次に何をすればいいのか迷う
- 物の場所を思い出せない
- 導線が定まっていない
- 無意識で動けない
こうしたことが、新店では必ず起こります。
分かりやすく言えば、
「全員が新人状態」
なのです。
もちろん、それぞれ経験値はあります。
ですが、新しい箱、新しい導線、新しいチームになると、身体がまだ現場を覚えていません。
つまり、一つ動くたびに、
「考えなければならない」
状態になります。
新規開業の準備とは、この“考える回数”を、どれだけ減らせるかだと私は思っています。
大手チェーンが導線を統一する理由
大手チェーンでは、この“身体が覚えている”を最大限活かすために、
- キッチンの構造
- 備品配置
- 冷蔵庫位置
- 動線
などを、極力統一しています。
なぜなら、
「身体で覚えている動き」
が、そのままオペレーションスピードに直結するからです。
つまり、長年培われたノウハウが、導線や配置そのものに反映されているのです。
今回の新規開業で起きていたこと
今回携わった案件は、
- 既存店の休業
- 別場所への移転
- 新業態への変更
が同時に起きる、かなり特殊なケースでした。
つまり、
“移転”と“新規オープン”
が混ざったような状態です。
その中で備品関連は、
- 一部は旧店舗から移動
- 一部は新規購入
- 一部は居抜き備品を流用
- 一部は海外から輸入
という、非常に複雑な状況でした。
ですが、現場に入ってみると、
- 旧店舗から備品が届いていない
- 残置物の数量が把握できていない
- 海外備品が大幅遅延
- 誰が購入担当なのか不明
など、交通整理が全くできていない状態でした。
さらに、オペレーションの要とも言えるPOSシステムの導入日程が、床施工と重なってしまい、
業者が一度引き上げる
↓
再設置はプラクティス前日
という、かなり厳しい状況にもなっていました。
小刻みな納品は、時間と思考を奪う
備品の配置は、図面だけで決め切れるものではありません。
実際に現場に立ってみると、
- 思ったより動きづらい
- テーブル間隔が違う
- 動線が詰まる
など、必ず修正が発生します。
ですが、その時に備品が全部揃っていないと、
「とりあえずここに置いておく」
が増えていきます。
そして後日、追加納品されるたびに、
- 再配置
- 再検討
- 再片付け
が発生します。
つまり、
“考え直す回数”
が増えるのです。
これは、かなり疲れます。
しかも、納品があるたびに、
- 梱包を外す
- ゴミをまとめる
- 運ぶ
- 片付ける
という労力も必要になります。
だからこそ、
「納品日をまとめる」
ことに意味があります。
全体像が見えている状態で、一気に配置を決める。
その方が、圧倒的に効率が良いのです。
ロールプレイにも大きく影響する
今回、特に強く感じたのは、
“物がないと、ロールプレイが成立しない”
ということでした。
例えば、
- 実際のお皿サイズ
- カトラリー配置
- トレー運び
- 卓上の見え方
などは、現物がないと判断できません。
結果として、
「まだ物が来ていないから決め切れない」
が増えていきます。
これは、オープン前の現場にとって、かなり大きなストレスです。
理想の納品スケジュールとは
私が理想だと思うのは、
保健所・消防検査終了
↓
翌日に備品一括納品
↓
片付け・配置決定
↓
翌日からロールプレイ開始
という流れです。
さらに、
- ホール責任者
- キッチン責任者
- 全体統括責任者
この役割分担が明確になっていることも重要です。
新規開業では、想定外の問題は必ず起こります。
ですが、
“長の準備”
が周到であればあるほど、オープン後のストレスは確実に軽減できます。
まとめ|新規開業は「準備」で決まる
飲食店の新規開業は、華やかに見える反面、現場は非常に泥臭い仕事の連続です。
そして、その成否を分けるのは、
“準備”
だと私は思っています。
特に、
- 備品
- 消耗品
- 導線
- 配置
といった部分は、
「営業が始まる前に、どれだけ身体へ落とし込めるか」
が非常に重要です。
そのためにも、
備品納品はできる限り一日にまとめる。
これは、新規開業における、非常に重要なポイントの一つだと思っています。
少しでも参考になれば幸いです。
