私のキャリアの大半は、飲食店での店舗運営とマネジメントにあります。
その中で、ある時から「ウェイター」という言葉に違和感を覚えるようになりました。
ウェイターとは「待つ人」
ウェイター(Waiter)とは、その名の通り「待つ人」です。
お客様に呼ばれたら行く。
注文を受ける。
料理を運ぶ。
会計をする。
昔のサービス業であれば、それで十分だったのかもしれません。
しかし、現代のレストランサービスは違います。
ただ待っているだけでは、お客様に満足していただくことはできません。
むしろ、お客様が求めるものを先回りして考え、行動することが求められています。
だから私は、ホールスタッフは「ウェイター」ではなく、
顧客満足を取りに行くアタッカー
だと思っています。
顧客満足は待っていても生まれない
先日、とある動画を見ていた時のことです。
海外のレストランでは、一皿ごとにシェフがお客様のもとへ行き、
「料理はいかがでしたか?」
と感想を聞くことがあるそうです。
そのシェフは、
「コミュニケーションもシェフの仕事だ」
と言っていました。
その動画の中でも、
「サービススタッフはアタッカーだ」
という表現が使われていました。
その言葉を聞いた瞬間、
「ああ、自分が昔から感じていたことはこれだったんだな」
と、妙に腑に落ちたのです。
アタッカーには二つのタイプがある
私が見てきた優秀なサービスマンには、大きく分けて二つのタイプがいました。
1.自分の個性で勝負するタイプ
昔一緒に働いていた方に、とても印象的なサービスマンがいました。
男性なのですが、男性らしさにこだわらず、とても独特な接客スタイルを持っていた人です。
「あら~、いらっしゃい♥」
そんな雰囲気で自然とお客様の懐に入り込む。
気が付けば常連のお客様に可愛がられ、
家族旅行に誘われて海外へ一緒に行ったという逸話までありました。
その人は、自分自身が商品でした。
俳優出身だったこともあり、人前で自分を表現することに長けていたのです。
ただし、このタイプには弱点もあります。
ハマる人には圧倒的に支持されますが、苦手な人には全く刺さらない。
まさに諸刃の剣です。
2.相手の背景を汲み取るタイプ
私はどちらかと言えばこちらでした。
自分を前面に出すのではなく、
お客様の背景を想像する。
なぜ来店されたのか。
何を期待しているのか。
何に困っているのか。
何をされたら嬉しいのか。
そういったことを考え続けるタイプです。
サービスの本質とは、
言われる前に行動すること
だと思っています。
「無料の水」で学ぶサービスの本質
私が尊敬していた先輩がいました。
その方は新人教育の際、必ずこう教えていました。
無料の水を、お客様が感動するタイミングで出しなさい
よく考えると深い言葉です。
お客様が今、水を欲しいと思った瞬間に持っていく。
それができれば、お客様のことを見ているということ。
観察しているということ。
汲み取ろうとしているということ。
だからその先輩は、
例え今がそのタイミングと分かっていても、決して
「今持っていけ」
とは教えませんでした。
自分で考えさせる。
失敗させる。
そしてまた考えさせる。
その繰り返しの中で、
お客様を観察する力が育つからです。
アタッカーには権限が必要
そしてもう一つ大切なことがあります。
アタッカーには権限が必要です。
以前働いていたレストランでは、
「オン・ザ・ハウス」(※)
("店のおごり"の意)
という制度がありました。
簡単に言えば、
お客様に喜んでいただくためなら、スタッフ判断で何かを無料提供しても良い。
という仕組みです。
これは単なるサービスではありません。
会社からスタッフへのメッセージです。
顧客満足を第一に考えてください
という意思表示です。
権限を使って行ったこと
私はこの制度を何度も活用しました。
終電を逃してしまったお客様のために車を手配したこともあります。
地方から来店され、滞在時間が一時間しかなかったお客様には、
キッチンにお願いしてお土産のおにぎりを用意したこともありました。
記念日のお客様のためにサプライズを仕掛けたこともあります。
会社のロゴを使った演出を行ったこともあります。
どれもマニュアルには書いていません。
ただ、
「このお客様に喜んでいただくにはどうすればいいか」
を考え続けた結果です。
まとめ|ウェイターではなくアタッカーであれ
結論として、
ウェイター(待つ人)では顧客満足を生み出すことはできません。
お客様を観察し、
背景を想像し、
必要なことを先回りして考え、
時には提案し、
時には驚きを届ける。
その積み重ねが、
「また来たい」
を生み出します。
私はホールスタッフとは、単に料理を運ぶ人ではなく、
お客様の体験価値を創る人
だと思っています。
だから今でも、
ウェイターではなく、
アタッカーなのです。
顧客満足は、マニュアルだけでは生まれません。
お客様を観察し、背景を想像し、行動する。
その文化をどう作るかが、繁盛店とそうでない店の差になると私は考えています。
DUEでは、飲食店の現場支援やスタッフ教育を通じて、
「顧客満足を取りに行く組織づくり」をお手伝いしています。
スタッフ教育やサービスレベルの向上にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
(※)これは有名なリッツ・カールトンの決裁権が基になっています。

