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一万円のデザートが教えてくれたこと|お客様との関係と店長の責任

忘れられないオーダー

以前、僕が店長をしていたレストランでの出来事です。

そのお店には、毎日のように来店してくださる常連のお客様が何人もいらっしゃいました。

その中に、

スタッフ全員と仲良くしてくださるホステスの女性がいました。

ある日の営業前ミーティング。

一人のパティシェがこう言ったのです。

「今日、○○さんが来られるんですが、一万円のデザートを注文いただいています。」

僕は耳を疑いました。

「一万円?」

デザート単品で一万円です。


その金額に見合う価値はあるのか

話を聞くと、

前回ご来店時にそのお客様が、

「次回、一万円でスペシャルなデザートを作ってよ。」

と直接依頼したとのことでした。

しかし僕が気になったのは、

注文を受けたことではありません。

その準備でした。

特別な食材を仕入れている様子もない。

特別な仕込みをしている様子もない。

何を作るかも完全には決まっていない。

つまり、

一万円という価格に対する準備が出来ていなかったのです。


怒った理由

僕はパティシェを叱りました。

それは、

報告がなかったからではありません。

一万円という金額を軽く考えていたからです。

お客様と仲が良い。

応援してもらっている。

だから注文してもらえた。

そう思っていた節がありました。

でも違います。

お客様は友達ではありません。

応援してくださるからこそ、

期待に応えなければならない。

甘えてはいけないのです。


なぜ一万円のデザートを頼んだのか

営業前、

改めて担当ウェイターを交えて話をしました。

そこで初めて分かったことがあります。

そのお客様は、

商品が欲しかったわけではありませんでした。

そのパティシェを応援したかったのです。

将来独立したいという夢を知り、

自信を持ってほしいと思っていた。

つまり、

一万円のデザートは商品への対価ではなく、

エールだったのです。


だからこそ妥協できなかった

その背景を知った時、

僕はさらに思いました。

だったら尚更、期待を裏切ってはいけない。

一万円という金額以上に、

その想いに応えなければいけない。

パティシェも自分の甘さに気付きました。

そして、

今できる精一杯のものを作ると約束してくれました。


僕たちが選んだ結論

当日、

お客様にはそのデザートをお召し上がりいただきました。

そして食後、

僕は直接お話ししました。

「ご提示いただいた金額では頂戴できません。」

「彼が本当にその価値を提供できるようになった時、改めてご注文いただけますか。」

結果として、

原価から算出した適正価格の半額だけを頂くことにしました。

僕たちなりの戒めでもありました。


信頼は利益よりも大きい

もちろん、

そのお客様は一万円を払うつもりでした。

でも結果として、

その出来事はより深い信頼に繋がりました。

僕がその会社を辞めた今でも、

ご連絡をいただく関係が続いています。

もしあの日、

売上だけを見ていたらどうだったでしょう。

おそらく一万円をいただいて終わっていたと思います。

でもそれでは、

信頼は残らなかったかもしれません。


社風は判断を変える

今振り返ると、

僕自身も昔なら違う判断をしていたかもしれません。

数字を追うことが最優先だった時代の僕なら。

でもその会社には、

「お客様と関係を築く」

という文化がありました。

だからこそ、

その価値観が現場の判断にも表れたのです。


リーダーの仕事とは何か

この出来事で学んだことがあります。

リーダーの仕事は、

ルールを守らせることではありません。

コンセプトを浸透させることです。

なぜこの仕事をするのか。

なぜその判断をするのか。

何を大切にするのか。

それを伝え続けること。

それが組織を作り、

文化を作り、

サービスを作ります。


まとめ|価格ではなく価値を考える

一万円のデザート事件は、

価格の話ではありません。

価値の話です。

お客様が何を期待していたのか。

自分たちは何を提供するべきなのか。

その答えを考え続けることが、

サービスの本質なのだと思います。

そして何より、

応援してくださるお客様の想いに甘えないこと。

それがプロとしての責任なのだと、

今でも強く思っています。

ご参考になれば幸いです。

 

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