忘れられない一人のサービスマン
これまで数多くのサービスマンと一緒に仕事をしてきました。
その中でも、今なお忘れられない方がいます。
都内屈指のファインダイニングで長年トップウェイターを務め、
業界でも広く知られていた方。
ここではJさんと呼ばせていただきます。
当時の僕はフロアマネージャー。
いわゆる店舗のナンバー2を任されていました。
そんな職場に、鳴り物入りでJさんがやってきたのです。
動きが美しい人
Jさんの仕事は本当に美しかった。
無駄な動きがない。
全てが理にかなっている。
そして何よりエレガントでした。
料理を運ぶ姿。
お客様への声掛け。
テーブルへの入り方。
どれを見ても自然で、
長年積み上げてきた経験が全身から伝わってきます。
スタッフ全員にとって、
まさにお手本でした。
本当に凄い人は驕らない
しかし僕が最も感動したのは、
技術ではありません。
人柄でした。
Jさんは僕よりも年上で、
経験も実績も圧倒的に上です。
それにもかかわらず、
役職上、僕がフロアマネージャーだったため、
最後まで必ず敬語で接してくださいました。
何度、
「お願いですから呼び捨てにしてください」
と言ったか分かりません。
ですが、
最後まで一切変わりませんでした。
その姿を見て、
優れたサービスマンとは、
優れた人格者でもあるのだと教えられました。
新人教育で必ず伝えていたこと
そんなJさんが、
昔から新人教育で必ず伝えていたことがあります。
それは意外なほどシンプルな内容でした。
「とにかく目を皿のようにしてお客様を見なさい。」
そして、
「水を出し続けなさい。」
でした。
なぜ水なのか
Jさんはこう続けました。
「100回考えて水を出してみなさい。」
「必ず一度や二度、本当に良いタイミングがあるから。」
お金のかからない水。
レストランにとって大きな利益を生む商品ではありません。
でもだからこそ良いのです。
お客様を観察する。
気持ちを想像する。
行動してみる。
結果を確かめる。
このサイクルを何度も繰り返せる。
つまり、
ホスピタリティを鍛える最高の教材だったのです。
ホスピタリティは才能ではない
多くの人が、
サービスの上手な人を見ると、
「あの人はセンスがある」
と言います。
もちろんセンスもあります。
でも本当に大切なのは、
お客様を見続けること。
考え続けること。
そして行動し続けることです。
Jさんが教えていたのは、
まさにその部分でした。
ホスピタリティは才能ではない。
習慣なのです。
基本の上にしか応用は乗らない
サービス業には、
数え切れないほどのテクニックがあります。
会話術。
提案力。
記憶力。
演出力。
どれも大切です。
ですが、
それらは全て基本の上に成り立っています。
お客様を見る。
考える。
動く。
この基本がなければ、
どんなテクニックも機能しません。
Jさんの教えは、
僕にそのことを改めて気付かせてくれました。
トライ&エラーを繰り返そう
もしホスピタリティを磨きたいなら、
まずはお客様をよく見ること。
そして、
「今かな?」
と思ったタイミングで行動してみること。
失敗しても構いません。
100回試して、
99回外しても良い。
残り1回で、
お客様が心から喜んでくれる瞬間があるかもしれない。
その経験が、
サービスマンとしての感覚を育ててくれます。
まとめ|感動は観察から生まれる
Jさんから学んだことは、
サービスの技術ではありませんでした。
お客様を観察すること。
想像すること。
そして行動すること。
ホスピタリティとは、
特別なことをする能力ではなく、
相手を思い続ける姿勢そのものなのだと思います。
今でも接客や教育について考える時、
真っ先に思い出す教えの一つです。
そしてその教えは、
飲食店だけでなく、
人と関わる全ての仕事に共通することなのかもしれません。
ご参考になれば幸いです。
