クレーム対応 事例集 店長・教育

クレームは、人と人になれる最高のチャンスだった|忘れられない店長の神対応

大好きな店長がいるレストラン

僕には昔、大好きなレストランがありました。

3日に1回は通うほどのヘビーユーザー。

理由は単純です。

その店の店長が大好きだったから。

そのお店は365日営業。

盆も正月もありません。

そして何より驚いたのは、その店長が就任してから約2年間、一度も休んだことがなかったことです。

仕事帰りにふらっと立ち寄り、

他愛もない話をする。

お気に入りのパスタを食べる。

そんな時間が好きでした。

でも本当は、

料理よりも、

店長に会いに行っていたのだと思います。


よくあるミスから始まった

2006年の正月明け。

新年の挨拶を兼ねて立ち寄ったところ、

珍しく店長は不在。

奥で事務仕事をしているとのことでした。

仕方なく席につき、

新人スタッフにジントニックとパスタを注文しました。

ところが10分経っても何も出てこない。

後から入ったお客様のドリンクは出ている。

明らかに忘れられていました。

好きなお店だからこそ、

気付くまで待とうと思っていましたが、

さすがに我慢できず催促しました。

別の女性スタッフが対応してくれ、

ジントニックはすぐに出てきました。

しかしオーダーを取った本人は、

コーヒーマシンの掃除をしながら、

こちらを見ようともしません。

「ああ、忘れていたことに気付いているんだな」

そう思いました。

ここまでは、

飲食店ではよくある話です。


さらにミスは重なった

しばらくして、

注文したパスタが運ばれてきました。

しかし、

違う。

頼んだものではありませんでした。

「注文したものと違いますよ」

そう伝えると、

「お作り直しします」

と返ってきました。

でも僕は、

「いや、これでいいです」

と答えました。

おそらくオーダー自体を忘れ、

慌てて記憶を頼りに通したのでしょう。

それも何となく分かりました。

だから料理のミス自体は、

そこまで怒っていなかったのです。


腹が立った本当の理由

でも食べ進めるうちに、

だんだん腹が立ってきました。

なぜか。

ミスしたことではありません。

オーダーを取った本人が、

一度も謝りに来なかったからです。

忘れたことも分かっている。

料理を間違えたことも分かっている。

それなのに来ない。

いや、

来られない。

気まずいから。

怒られるのが怖いから。

僕にもその気持ちは分かります。

でも、

必要なのは逃げることではなく、

素直に謝ることです。

人はミスをします。

だからこそ、

ミスの後の姿勢が大切なのです。


店長にぶつけた怒り

怒りが収まらず、

食事の途中で会計をお願いしました。

その時、

ちょうど店長が奥から出てきました。

事情を聞いた店長は、

すぐに僕のところへ来て謝罪してくれました。

その瞬間、僕は言いました。

彼が謝罪に来ないのはおかしい

と。

今思えば、

少し感情的だったと思います。

でも当時は、

どうしても許せなかった。


本当に許せなかったこと

後から振り返ると、

僕が怒っていた理由はもう一つありました。

それは、

大好きなお店が、

たった一人の対応によって台無しになっていたことです。

店長が作ってきた空気。

店長が育ててきたお店。

それが崩れてしまうことが、

悲しかったのです。

だから僕は、

「今日は気分が悪いので帰ります」

そう伝えて店を後にしました。

その新人スタッフは後から追いかけてきて謝りました。

きっと本当に反省していたのでしょう。

でもその時の僕には、

受け止める余裕がありませんでした。


忘れられない出来事はここから始まる

家に帰り、

映画を観ていた夜。

突然インターホンが鳴りました。

こんな時間に誰だろう。

そう思いながら扉を開けると、

そこに立っていたのは、

あの店長でした。

両手いっぱいのビニール袋を抱えて。

僕は言葉を失いました。

どうして家を知っているのか。

なぜここまで来たのか。

頭が追いつきません。

そんな僕に店長は言いました。

「今日はすみませんでした。」

「改めて新年のご挨拶に来ました。」


忘れられない言葉

そして店長は続けました。

「ダサいチームですいません。」

「でも必ず良いチームにします。」

「また可愛がってやってください。」

「本当に申し訳ありませんでした。」

その言葉には、

言い訳も、

責任転嫁も、

ありませんでした。

全てを背負う覚悟だけがありました。

それが、

店長という仕事なのだと、

今でも思います。


神対応の正体

店長はビニール袋を差し出しました。

中には、

ビール、

栄養ドリンク、

おつまみ、

入浴剤、

なぜか震災時帰宅支援マップ。

そして、

なぜかエロ本2冊とティッシュまで入っていました。

思わず笑ってしまいました。

さっきまで怒っていたのに。

でも、

その不器用な優しさが、

たまらなく嬉しかったのです。

店長が帰った後、

僕は泣きました。

感動と、

申し訳なさと、

色々な感情が混ざって。


クレームは最高のチャンス

この出来事から学んだことがあります。

クレームとは、

お客様と従業員が対立する場ではありません。

人と人になれる場です。

むしろ、

そこから本当の信頼関係が始まることさえあります。

もちろん、

ミスは起こさない方が良い。

でも、

ミスの後にどう向き合うか。

そこに、

お店の本質が現れます。


飲食店はお客様に育ててもらう場所

僕は今でも思います。

飲食店は、

お客様に育ててもらう場所です。

そして、

良いレストランには、

必ずドラマがあります。

あの日、

僕が怒らなければ、

この出来事は起きなかったかもしれません。

店長が好きなだけで終わっていたかもしれません。

でも今は違います。

あの日の出来事があったから、

僕はその店長を心から尊敬しています。

もし皆さんにもお気に入りのお店があるなら、

ぜひ育てるつもりで通ってみてください。

相思相愛のレストランがある人生は、きっと豊かです。

ご参考になれば幸いです。

 

 

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