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飲食店のアレルギー対応マニュアル|事故を防ぐ教育と仕組みづくり【実例付き】

なぜ飲食店にアレルギー対応が求められるのか

飲食店において、アレルギー対応は今や欠かすことのできない業務の一つです。

メニューにアレルギー表示を行う店舗も増え、お客様からの問い合わせも年々増加しています。

しかし実際の現場では、

「確認したつもりだった」
「伝えたつもりだった」
「分かっていると思っていた」

という思い込みから事故が発生しています。

そしてアレルギー事故は、単なるクレームでは済みません。

お客様の健康や命に関わるだけでなく、店舗の信用を失い、場合によっては営業継続にも大きな影響を与えます。

私はこれまで飲食店の責任者として現場に立つ中で、アレルギーに関する重大な事例を二度経験しました。

一つは他店舗で発生した重篤なアレルギー事故。

もう一つは、自分自身が責任者を務める店舗で発生した事故です。

どちらも共通していたのは、

「知識不足」ではなく、
「仕組み不足」だったということ。

この記事では、実際の事例をもとに、

・なぜ事故が起きたのか
・どこに問題があったのか
・どうすれば防げたのか

を振り返りながら、飲食店に必要なアレルギー対応の仕組みづくりについてお伝えしたいと思います。


事例① 他店舗で起きた重篤アレルギー事故

アレルギー管理の基本オペレーション

私が勤務していた会社では、アレルギー対応の基本ルールとして、

「アレルギーのお客様の伝票にはテーブル番号の前にAを付ける」

という仕組みがありました。

Aは Allergy(アレルギー)の頭文字です。

キッチンもホールも、そのAを見ることで注意喚起ができる仕組みでした。

例えば、

・キッチンは調理前にアレルギー対応を確認する
・料理を運ぶスタッフも注意して提供する
・責任者もそのテーブルを把握する

といった形です。

一見すると、とても優れた仕組みに見えます。

しかし当然ながら、

「Aを付ける」

という最初の工程が抜けてしまえば、何も機能しません。

そして実際に事故は起きました。


コース予約で起きた事故

ある日、貝類アレルギーのお客様を含むコース予約が入りました。

本来であれば前菜の一部を差し替えて提供する予定でした。

しかし当日、誤って北寄貝を使用した前菜が提供されてしまいます。

不安に思ったお客様が、近くを通ったスタッフへ質問しました。

「これ、貝ですか?」

するとスタッフは、

「いえ、ミョウガです」

と即答。

しかし実際は北寄貝でした。

お客様はその言葉を信じて口にし、重篤なアレルギー症状を発症。

救急搬送される事態となりました。


なぜ事故は起きたのか

事故後、状況を整理すると、複数のミスが重なっていました。

まず責任者。

営業前ミーティングでは共有していたものの、現場レベルで徹底できていませんでした。

次にレセプション。

来店時に担当ウェイターへアレルギー情報を伝達できていませんでした。

担当ウェイターも問題でした。

本来であればオーダーテイク時にアレルギー確認を行うルールでしたが、それを行っていませんでした。

キッチンも、

「この時間のコース予約はアレルギーのお客様だったはずだ」

という違和感を持てれば、防げた可能性がありました。

そして最後に新人スタッフ。

確認せず、自分の推測で回答してしまいました。

どれか一つのミスだけなら、防げたかもしれません。

しかし複数のミスが重なった結果、事故へと発展してしまったのです。


この事故で最も責任が重いのは誰か

事故後、多くの人は

「新人スタッフが悪い」

と考えました。

確かに重大なミスです。

しかし私が最も責任が重いと思ったのは、責任者でした。

なぜなら、そのテーブルは当日絶対に外してはいけないテーブルだったからです。

アレルギー対応のお客様が来店する。

時間も分かっている。

予約人数も分かっている。

コース内容も分かっている。

それならば、

「何時の何番テーブルのアレルギー対応は必ず私が確認する」

というレベルまで落とし込めたはずです。

また、

「お客様が来店したら必ず私を呼んで」

とレセプションへ伝えることもできたはずです。

つまり事故の本質は、

新人の知識不足ではなく、

責任者によるリスク管理不足だったのです。

事故は最後にミスした人が起こすのではありません。

事故が起こるまでに存在した複数の穴を、責任者が塞げなかった結果なのです。


事例② 自分の店舗で起きたアレルギー事故

まさか自分の店で起きるとは思っていなかった

実は私自身も、責任者としてアレルギー事故を経験しています。

ある土曜日のランチタイム。

店頭にはウェイティングのお客様が並び、
店内も満席に近い状態でした。

ピークを迎えようとしていたタイミングで、
スタッフが血相を変えて私のもとへ来ました。

「店長すみません。アレルギーのものが出てしまって、お客様がお怒りなんです……」

嫌な予感しかしませんでした。


「入っていません」と答えてしまった

ご来店されていたのは、ご家族4名様。

オーダー時にお母様から、

「娘が甲殻類アレルギーなんですが、この料理には入っていますか?」

という確認があったそうです。

しかしスタッフは、

「入っていません」

と即答していました。

ところが実際には、その料理には海老をすりつぶした具材が使用されていたのです。

私は思わず、

「なんで確認しなかったの?」

と聞きました。

返ってきた答えは、

「入っていないと思っていました」

でした。


大事には至らなかった

幸いだったのは、

娘さん自身が違和感に気付き、すぐに吐き出したこと。

さらに症状が軽度だったこと。

発症には至りませんでした。

しかし、だから良かったという話ではありません。

もし年齢がもっと幼かったら。

もし重篤なアレルギーだったら。

もし飲み込んでしまっていたら。

結果は全く違っていたはずです。


親御様の怒りは当然だった

お母様は烈火のごとく怒られました。

それも当然です。

なぜなら、

「確認した」

からです。

聞かなかったのではありません。

店側に確認し、その回答を信じた結果だったのです。

私は平身低頭で謝罪し、

代替料理を最優先で用意し、

名刺をお渡しし、

「万が一、後から症状が出た場合は必ず責任を持って対応いたします」

とお伝えしました。

そして退店されるまで、ほぼ付きっきりで経過を見守りました。

当然、お代もいただきませんでした。


一人のミスが店舗全体を崩壊させる

この時に痛感したのは、

アレルギー事故は一人のお客様だけの問題ではない

ということです。

私が対応に追われることで、

店頭のお客様対応が遅れる。

案内が遅れる。

料理提供が遅れる。

クレームが増える。

店内の空気が悪くなる。

結果として、

その日来店したすべてのお客様の満足度が下がるのです。

さらに、

そのご家族は二度と来店されませんでした。

そして口コミや知人への評判まで考えると、
被害はその場だけでは終わりません。


二つの事故から学んだこと

共通点は「思い込み」

他店舗の事故も。

私の店舗の事故も。

原因は同じでした。

知識不足ではありません。

確認不足です。

もっと言えば、

「たぶん大丈夫」

という思い込みです。


人は忙しいと確認を省略する

飲食店の現場は忙しい。

だからこそ、

・聞かなくても分かるだろう
・確認しなくても大丈夫だろう
・たぶん合っているだろう

という判断をしてしまいます。

しかしアレルギー対応だけは違います。

忙しいからこそ、
確認を増やさなければならないのです。


アレルギー事故を防ぐ5つの仕組み

① アレルギー情報を全員で共有する

責任者だけが知っていても意味がありません。

レセプション

ホール

キッチン

全員が把握している状態を作ることが重要です。


② 口頭だけに頼らない

伝言ゲームは必ずミスが起きます。

伝票

POS

予約台帳

席図

など、必ず目に見える形で残しましょう。


③ 不明な場合は必ず確認する

分からないなら確認する。

これは鉄則です。

推測で答えない。

想像で答えない。

確認してから答える。

新人教育で最も徹底すべき内容の一つです。


④ 責任者が最終確認する

アレルギー対応のお客様は、

「絶対に外してはいけないテーブル」

です。

責任者が把握し、
最終確認する仕組みを作るべきです。


⑤ 事例を共有する

事故を隠してはいけません。

私自身、

今回紹介した二つの事例を、
新人オリエンテーションで必ず話しています。

人は失敗談から学びます。

実例ほど教育効果が高いものはありません。


まとめ|アレルギー対応は「人」ではなく「仕組み」で守る

アレルギー事故は、知識不足で起きることもあります。

しかし多くの場合、知っていたのに防げなかった

というケースです。

つまり問題は、人ではなく仕組み。

誰かが優秀だから防げる。

誰かが気を付ければ防げる。

そんなものではありません。

誰が担当しても事故が起きない仕組みを作ること。

そして、

「人の命を預かっている」

という意識を持ち続けること。

それが飲食店の責任者として最も大切な役割だと、私は考えています。


飲食店のオペレーション改善やスタッフ教育でお悩みの方へ

私はこれまで20年以上にわたり、飲食店の店長・エリアマネージャーとして現場運営と人材育成に携わってきました。

アレルギー対応をはじめ、

  • オペレーション構築
  • スタッフ教育
  • 店長育成
  • マニュアル作成
  • 新規オープン支援

など、現場目線での改善をお手伝いしています。

「うちの店舗でも仕組みを見直したい」
「教育方法に悩んでいる」

という方は、お気軽にご相談ください。

現場で本当に機能する仕組みづくりを、一緒に考えさせていただきます。

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