飲食参入撤退事例

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飲食店経営で失敗する典型例|異業種参入で起きた“ハコ”と“ヒト”の問題

昔の話です。

ある複数の会社を経営している社長さんが、飲食業界へ参入し、そして撤退に至った――。

今日は、その実例を書いてみようと思います。

何が問題だったのか。
どうすれば良かったのか。

異業種から飲食業界へ参入しようとしている方には、ぜひ参考にしていただきたい内容です。


あらまし

物件概要

場所は六本木。

少し脇道へ入った場所ではあるものの、繁華街ど真ん中のエリアでした。

物件は、5階建てビルの一棟貸し。

ただし、それぞれのフロアは狭く、1フロアに10名ほどしか入らない造りです。

3階にキッチン。

1・2・4・5階が客席で、3階で調理した料理を、ダムウェーターで各階へ運ぶスタイルでした。

物件は居抜き。

元々は和食業態で、前借主は「ミシュラン掲載」を目指していたそうです。

そのため、各フロアには男女別のトイレまで設置されていました。

テーブルや椅子、食器やグラス類などの残置物も多く、その点では初期投資を抑えられるメリットがありました。

しかし当然ながら、六本木の一棟貸し。

賃料はかなり高額でした。


お店の業態と責任者

出店した業態は、社長さん肝煎りの内容。

ご自身が「これは美味しい」と感じた名物料理を軸に、お店をプロデュースしていました。

店舗責任者として招聘された店長は、

「今まで出会った中で、最も素晴らしい接客をする人」

と、社長自ら評価していた人物。

さらに料理長は、その店長の繋がりで合流。

お店を始めるための役者は、一通り揃いました。


ハコの課題

多層階営業という難しさ

前述の通り、この物件は5フロアに分かれていました。

ここで問題になるのが、

【スタッフ配置】

です。

本来、40席規模のレストランであれば、

ホール2.5人ほどで十分回せるケースもあります。

0.5人というのは、キッチン兼務のイメージです。

オープン直後でオペレーションが固まっていないとしても、

責任者含め4人いれば、通常は問題ない広さ。

ですが、この店舗は違いました。

客席が4フロアに分かれているため、

最低でも各フロアに1名配置しなければならない。

この時点で4名。

さらに、全フロアを行き来する店長。

オープン当初は更に人数が必要となり、各階2名配置。

つまり、

本来なら「3人+責任者」で済むはずの店舗に、

【8人+責任者】

という、人件費構造になっていました。


派遣スタッフという選択

それだけの人数を固定スタッフで抱えるのはリスクが高い。

そのため、店長は【派遣スタッフ】を活用していました。

派遣スタッフは、

必要な時だけ呼べる

という利点があります。

しかしその反面、

一人当たりのコストは高い。

つまり、

“人数が必要なハコ”

という時点で、固定費リスクを抱えていたのです。


ヒトの課題

オープン直後は人を減らせない

オープン直後は、

  • 知人
  • 新しいもの好き
  • 話題性

などもあり、多数の来店が見込まれます。

そのため、ギリギリ人数で運営する訳にはいきません。

ですが、お迎え体制を厚くしすぎると、今度は、

【手が空く人】

が出てきます。


起きてしまった出来事

手すきになった派遣スタッフ達へ、店長は街頭でのチラシ配りを指示したそうです。

しかし、そのスタッフ達はチラシを配るどころか、

会話に夢中になっていた。

それを偶然社長が目撃し、烈火の如く怒ったそうです。

もちろん、社長が怒る気持ちも分かります。

ただ、この出来事以降、

同じ派遣スタッフが来られなくなった。

店舗運営において、

「同じメンバーで回す」

というのは、とても重要です。

ですが結果として、店長は常に新しい派遣スタッフを抱えながら運営しなければならなくなり、

“ヒト”

に関する悩みは尽きなかったようです。


数カ月後、撤退へ向かう

その後、数カ月で料理長が退社を申し出ました。

元々、得意業態ではなかったようですが、詳しい理由は分かりません。

そして今度は、店長が退社を申し出ます。

責任者がいなくなっても、お店は営業しなければならない。

その結果、他業種に携わる飲食未経験の自社スタッフを責任者へ据えることになりました。

当然ながら、運営は迷走します。

さらに、その新しい責任者は不正を働き、解雇。

結果として、お店は1年も持たず撤退することになりました。


この事例から学べること

最初に言っておくと、僕は業態について論じるつもりはありません。

だから、あえて「何屋」かは書きませんでした。

何が当たるか。

何なら成功するか。

それは誰にも分かりません。

無数の業態がある中で、

「これなら確実に儲かる」

なんてものは存在しないと思っています。

何をやるかは、出資者の自由です。

ですが、このケースの問題点は明確でした。

それは、

  • ハコ
  • ヒト

です。

そして実は、この二つは、飲食店で最もよく起きる問題でもあります。


ハコの問題点

多層階はオペレーションコストを増やす

以前の記事でも書きましたが、

物件を見る際に重要なのは、

【売上が減る要因があるか?】

という視点です。

このケースでは、

多層階営業によって、人件費が必要以上にかかる。

という問題が、契約前から見えていました。

ここでは、

「売上が減る」

というより、

【純利益が減る】

と言った方が正しいかもしれません。

無駄なコストが発生し続けるハコは、契約してはいけない。

これが、このケース最大の教訓です。


ヒトのリスクヘッジ

責任者が退社するリスク

続いて、ヒトに関すること。

これは今回のケースに限らず、全ての飲食店に共通する話です。

それが、

【責任者が退社すること】

です。

つまり、

「その人が辞めたら終わる」

状態です。

飲食店では、本当にこの手の話が多い。

例えば、

料理長が辞めたら、キッチンスタッフ全員が辞める、

いわゆる、【総上がり】のリスクです。

実は、僕自身も経験があります。


翌日から回らない恐怖

翌日から営業できない。

これは、本当に恐ろしい。

僕自身、そのリスクヘッジとして、

  • 派遣スタッフ
  • 知人の紹介
  • 友人のヘルプ

などを使ったことがあります。

百戦錬磨の経営者なら、

「辞める可能性」

も織り込み済みかもしれません。

ですが、どれだけ信頼していたとしても、

“退社リスクは常にある”

と考えておくべきです。


撤退のタイミング

実は、一度撤退を考えていた

このケース。

実は店長と料理長が辞めた時点で、社長は一度撤退を考えたそうです。

ですが、

「なかなか借り手がつかないビルだから」

と、物件オーナーから引き留められ、

「もう少し続けるか……」

となったようです。

本業を揺るがすほどの赤字ではなかった。

その背景もあったのでしょう。

ですが、遅かれ早かれ撤退するなら、

早い方が良い。

これは本当にそう思います。


撤退ラインを先に決める

では、どこで撤退判断をするのか。

それは会社の体力次第です。

ですが例えば、

【3カ月連続で損益分岐点を下回ったら】

など、

“先にルールを決めておく”

ことが大切です。


まとめ

飲食参入が、

「シェフの独立支援」

でない限り、

  • キッチン責任者
  • ホール責任者

を、それぞれ据えなければなりません。

そして、その責任者が辞めた時のリスクヘッジを、どう行うか。

これは、本当に重要です。

優秀なシェフや店長なら、自分の後任候補を紹介してくれることもあります。

ただし、前任者より実力が落ちるケースも少なくありません。

だからこそ、

  • 後任候補はいるか
  • 紹介可能な人脈はあるか

を、普段から確認しておくこと。

そして、強制はできませんが、

「辞める時は誰か紹介してね」

と、早めに伝えておくのも一つの方法です。

そして最後に。

ハコ――つまり物件。

こればかりは、

“きちんと評価できる人”

へ相談するべきです。

どんなハコでも、この業態なら勝てる。

そう思っていても、現実は想定通りにいかないことが多い。

少しでも参考になれば幸いです。

※ハコ選びについては、以下の記事もご参照ください。

異業種からの飲食参入の注意点~物件とレイアウト~

あわせて読んで欲しい~前編~

異業種からの飲食参入注意点

あわせて読んで欲しい~後編~

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