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飲食店のアレルギー対応は“仕組み”で防ぐ|現場で起きた事故から学ぶ危機管理

昨今、飲食店においてアレルギー対応は欠かせないものになっています。

大手飲食チェーンでは、メニュー表へのアレルギー表記を徹底し、

「内容変更はできませんので、対象食材の入っていない商品をご注文ください」

という形で、リスクヘッジを行っているケースも増えました。

これは、店舗数が多くなればなるほど、全ての現場で柔軟な対応を統一することが難しくなるからです。

一方で、小規模店舗では事情が少し異なります。

・日替わりメニュー
・仕入れによる内容変更
・現場判断によるアレンジ

などが発生するため、どうしても“個別対応”が必要になります。

ですが、この個別対応には、大きな危険も潜んでいます。

もし現場に、

  • 危機管理意識
  • 情報共有
  • 確認体制

が整っていなければ、人命に関わる事故に繋がることもあるからです。

今日は、実際に私が以前勤めていた企業で、新人研修の題材として共有されていた「アレルギー事故」の事例をもとに、飲食店に必要な危機管理についてお話したいと思います。


飲食店でアレルギー対応が重要視される理由

小規模店ほど現場判断が増える

小規模なお店ほど、

「この食材を抜けますか?」

「ソース変更できますか?」

という柔軟な対応を求められることがあります。

そして実際、それに応えられるお店も多いです。

ですが、その“対応できること”自体が、同時にリスクにもなります。

なぜなら、対応が増えるほど、

  • 伝達
  • 確認
  • オペレーション

が複雑になるからです。

つまり、柔軟性のあるお店ほど、より高い危機管理能力が必要になるのです。


“エキスもNG”は最重要レベル

アレルギー対応には、様々なレベルがあります。

例えば、

  • 食材そのものがNG
  • 出汁やエキスもNG
  • コンタミネーション(意図しない混入)もNG

など。

特に、「エキスもNG」以上の場合は、現場全体が強い意識を持たなければなりません。

ここを軽視すると、重大事故に繋がります。


現場で実際に起きたアレルギー事故

新人スタッフが答えてしまった一言

私は以前勤めていた会社で、新人オリエンテーションの中で、

実際に自社の別店舗で起きたアレルギー事故の事例を共有して、教育していました。

ある日、貝類アレルギーのお客様からコース予約が入りました。

しかも、「エキスも含めてNG」という、非常に注意が必要なケースでした。

当然、朝礼ではキッチンを含む全スタッフへ共有されます。

その後、お客様が来店。

前菜が提供された際、お客様が料理の中の食材を見て、通りがかったスタッフへ質問しました。

「これは何の食材ですか?」

そのスタッフは答えました。

「ミョウガです」

ですが実際には、それはホッキ貝でした。

質問されたスタッフは、入社2日目の新人。

お客様はその言葉を信じ、口に入れてしまいました。

そして、瞬時に気付きます。

「貝だ」

慌てて吐き出したものの、すでに遅く、アレルギー症状を発症。

結果として、救急車を呼ぶ事態になりました。


なぜ事故は起きたのか

ここで新人スタッフへ、私は質問します。

「この事故の、一番の問題は何だと思いますか?」

すると多くの場合、

「分からないことを適当に答えてしまったこと」

という答えが返ってきます。

もちろん、それも大きな問題です。

分からないことは、必ず確認しなければなりません。

ですが、私はそこで続けます。

「実は、一番の問題は違います」


本当の問題は「新人のミス」ではない

フィルターをすり抜けた6つのミス

本当に恐ろしいのは、

“アレルギー食材が、お客様のテーブルまで届いてしまったこと”

です。

つまり、この事故は新人一人の問題ではありません。

現場全体の“フィルター”が、何重にも機能しなかった結果なのです。


1.該当のお客様をテーブルにご案内したレセプション

アレルギーのお客様だという事を、ご案内時に担当ウェイターに伝えていない。

その意識の欠落=教育・仕組不足。


2.オーダーを飛ばした担当ウェイター

オーダー確認時にコースだと理解していながら、

アレルギーが頭から抜けていて、注意事項を伝えずに、オーダーを飛ばした。


3.料理を出したキッチン

予約でアレルギーがあると理解していたにもかかわらず、

同時刻に入って来たコース(含む人数)に、それが該当のお客様か疑問を持たなかったこと。


4.料理を運ぶ指示を出すデシャップ

全てのフードアップを最終確認し、担当しているデシャップが最後の砦。

その意識の欠落=教育・仕組不足。


5.通りがかりの新人スタッフ

入って二日目の新人スタッフが、分からない事を平然と適当に伝えられる事が問題=教育・仕組不足。


6.何より全責任のある店長

そして最終的には、全責任は店長にあります。

“エキスもNG”という最重要レベルのアレルギーに対し、現場全体へどれだけ危機意識を浸透させられていたか。

そこが問われます。


アレルギー対応は“教育と仕組み”で防ぐ

他人事が事故を生む

この事故で最も怖いのは、

「自分には関係ない」

という意識です。

例えば新人スタッフも、いずれ経験を積み、セクション担当になる日が来ます。

その時に、

「その事故は、自分にも起こり得る」

と感じられるか。

そこが重要です。

だから私は、研修で必ず、

「これは人の命に関わる話なんだよ」

と伝えていました。


店長の危機管理意識が現場を作る

この事故が起きた日は、非常に忙しかったそうです。

その影響か、それぞれが余裕がなかったとも考えられます。

ですが私は、それ以上に、

“店長の普段からの危機管理意識の不足”

が招いた事故だと思っています。

結果として、

  • 救急対応
  • オペレーション停止
  • 他のお客様への影響
  • 商業施設全体への影響

など、多くの問題へ発展しました。

そして何より、該当のお客様への対応。

解決には非常に長い時間がかかったと聞いています。

だからこそ、普段から、

  • 確認する文化
  • 疑問を持つ文化
  • 声を上げる文化

を作っておく必要があります。

現場の空気は、店長の日々の言葉と行動で作られるのです。


まとめ|アレルギー対応は「命」に関わる

アレルギー対応は、単なるサービスではありません。

時には、人命に直結します。

そして事故の多くは、

「たった一人のミス」

ではなく、

  • 教育不足
  • 確認不足
  • 危機管理不足
  • 仕組み不足

が積み重なって起きます。

だからこそ、必要なのは、

「気を付けよう」

という精神論だけではありません。

誰が見ても、誰が担当しても、事故が起きない“仕組み”を作ること。

それが、これからの飲食店にはより強く求められていくのだと思います。

少しでも、現場づくりの参考になれば幸いです。

命を預かる現場

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